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鉄球姫エミリー
八薙玉造 イラスト/瀬之本久史
定価700円(税込)
第6回SD小説新人賞大賞受賞! 堀井雄二氏激賞!!
王女ながらも、輝鉄と呼ばれる鉱石により爆発的に身体能力を向上させる鎧、大甲冑を纏い、鉄球を振り回す少女エミリー。弟王との玉座を巡る争いを避け、辺境に身を置くエミリーになおも陰謀の手は迫る! 黒い大甲冑に身を包んだ暗殺者、亡霊騎士の襲撃が屋敷を襲う。エミリーを護るために命さえも懸ける護衛騎士、装甲侍女たち。美しき王女を巡る死闘の行方は…!? 第6回SD小説新人賞大賞受賞作!!
「全く歯が立ちませんでした。まったくもって修行不足です」
「当たり前だ! 馬鹿者が。お前如きが何年修練を積もうが、妾に勝てると思っているのがあさはか千万!」
言い放ち、重騎士が兜を脱ぐ。
金の長髪が流れ落ちた。
夏の陽光に汗で濡れた髪が光る。ゆるくウェーブした髪が大甲冑の上に金色の流れを描く。形よい眉は強い意志を現すかのように吊りあがり、青い瞳はアルバートを見下ろしている。絶対の自信を帯びた微笑を湛える唇は艶やかな赤色だ。
彼女はエミリー・ガストン・ラングリッジ。ラゲーネン王国の前王ガストンの娘。つまり、ラゲーネン王国第一王女だ。
修道女エミリー 鉄球姫エミリー第二幕
八薙玉造 イラスト/瀬之本久史
定価650円(税込)
この鉄球姫エミリーが相手だ!
第6回SD小説新人賞大賞シリーズ第2弾!
それは孤高の赤き花。若き護衛騎士グレンの師は、かつて、王女エミリーをそう評した。襲撃事件により家臣を失い、修道院に入ったエミリーの下に護衛として赴くことになったグレンは、憧れの王女に会えることに胸を躍らせていた。しかしエミリーは、その想像をことごとく凌駕する! 不意討ち、暴言、セクハラ、鉄球! 描いていたエミリー像が虚しく崩れ去る中、修道院を舞台に再び陰謀の矢が放たれた。迎え撃とうとするグレンだったが…!? 第6回スーパーダッシュ新人賞大賞受賞の重装甲ファンタジー、第二幕開幕!
激突音で頭を揺らしつつも、もがきながら、なんとか身を起こし、振り向けば、そこに見知った顔があった。
「うはははは。ちょと待てよ。グレン。気づくとこだろ、そこは。五感鋭いんじゃないのか、お前の甲冑。どれだけ、いっぱいいっぱいだったんだ。なんか、ゼーゼー言ってるしさ」
しかも、見知った顔は爆笑していた。腹を抱え、涙まで滲ませ、見慣れた赤毛の青年が笑う。短めに揃えた赤毛の下、精悍とも言える整った顔が笑いのあまりに崩れていた。
「な、何してるんだ、リカード。お前、召使いだろ。それをお前、主に膝カックンとは……お前、お前なぁ! 死んでしまえぇぇっ!」
兜を脱ぎ捨ててグレンは怒鳴りつけた。汗に湿った短い黒髪を揺らし、整った眉を吊り上げてグレンは怒りの声を上げる。しかし、リカードと呼ばれた男の笑いは止まらない。長身を震わせて、腹を抱えて笑い続ける
花園のエミリー 鉄球姫エミリー第三幕
八薙玉造 イラスト/瀬之本久史
定価620円(税込)
決意、再会、激突。そして…
第6回スーパーダッシュ小説新人賞大賞受賞シリーズ! 怒涛の2カ月連続刊行!!
「おい、グレン。貴様の親父に会いに行くぞ」エミリーが唐突に放った言葉に、護衛騎士グレンは愕然とした。グレンの父ノーフォーク公ジョゼフは、かつてエミリーの命を狙い、家臣たちの命を奪った仇だ。動き出した傍若無人の『鉄球姫』を止めることができるわけもなく、その真意を測れぬうちに、エミリーは敵地へと潜入を開始する。一方、北方では敵国ヴェルンスト王国が動き始めていた…!
新人賞大賞受賞の重装甲ファンタジー、第三幕開幕!
一人の少女がいた。
大きく開かれた窓から入り込んだ陽光が白いドレスの上で踊る。飾り気の少ない上品な布地にほっそりとした四肢が包まれていた。純白のドレスの袖口から覗く、雪のような指先がボリュームあるスカートを摘み、わずかに持ち上げる。少女が一礼すると、長くまっすぐな黒髪がドレスの上を滑り落ちた。
「お兄様。お久しぶりです」
少女が顔を上げる。明るい笑みが少女の顔に満ちていた。
白い頬を紅色に上気させた彼女の黒い瞳が潤み、みるみるうちに涙が溢れ、頬を伝う。
長い髪をなびかせて少女は駆け、グレンへと飛び込んできた。それを受け止め、胸に抱く。
「アンジェリカ! いや、アン! 久しぶりだな!」
戦場のエミリー 鉄球姫エミリー第四幕
八薙玉造 イラスト/瀬之本久史
定価600円(税込)
待ちわびたか! 恋しかったか!
第6回スーパーダッシュ小説新人賞大賞受賞シリーズ! 疾風の2カ月連続刊行!!
ラゲーネン王国を惨劇が襲った。再び大切なものを失ったエミリーは絶望の淵に沈み、グレンもまた、その心を無力感にさいなまれる。しかし、残酷な現実は歩みを止めない。ヴェルンスト王国はその手をラゲーネン国内に着実に伸ばし、時を同じくして、半島派諸侯が王国に対し、反旗を翻す。王都に迫る脅威から大切なものを護るため、グレンは決意を胸に、苛酷な戦場へと向かう。深い絶望と悲しみの中、一人取り残されたエミリーは、再び立ち上がることができるのか…。新人賞大賞受賞の重装甲ファンタジー、第四幕開幕!
石の床を叩き、鉄靴の足音が追って来る。セリーナが来ていることには気づいていた。
「お話があります。グレン様」
その声に足を止める。
「セリーナさん……」
呼び止めてきたセリーナの表情に変化は見えない。だが、変わらない表情の中に、グレンは彼女の怒りをはっきりと感じた。これまで気づくことができなかった彼女の感情の起伏を読むことができたことを、今は喜ぶこともできない。誰よりもエミリーのことを思う装甲侍女が何を憤るのかは考えるまでもなかった。苦い気持ちになりながら、頷く。
セリーナに促され、使われていない部屋に入り、扉を閉めた。
「何故? とは問いません」
向き直り、グレンの目を覗き込みながらセリーナは言った。
「しかし、貴方は姫様の護衛騎士です」
平淡な声の中に明らかな怒気を感じる。これ程怒ったセリーナを見たことはなかった。修道院を初めて訪れた時、彼女は仲間たちの仇であるノーフォーク公に連なるグレンに対して、冷たく接していた。その時でも、今程の直接的な怒りは感じていない。
鉄球王エミリー 鉄球姫エミリー第五幕
八薙玉造 イラスト/瀬之本久史
定価600円(税込)
全てを護るために…決戦!!
第6回スーパーダッシュ小説新人賞大賞受賞シリーズ! 堂々完結!!
ヴィルヘルミーネ率いる暴竜鉄騎兵を撃退したエミリー。しかし、ヴィルヘルミーネは大兵力をもってラゲーネン王国最後の砦、河岸要塞を包囲した。繰り返される国土への攻撃に、ラゲーネン王国は決断を迫られる。戦と陰謀に散った者たちの想いを継ぎ、己の手が届く者たちを失わぬために、エミリーは決戦を決意、グレンやセリーナたち、共に歩んできた者たちも様々な想いを胸に戦いへ赴く。ここに『鉄球姫』エミリーと『血風姫』ヴィルヘルミーネの戦いの幕が上がる!新人賞大賞受賞の重装甲ファンタジー、堂々の完結!
「だが、妾にはまだ護りたい者。護るべき者がいる」
エミリーは諸侯を見回す。その目はジェファーソン伯も、ベレスフォード公も、エルネストすら映していた。
金色の髪を揺らしてエミリーが振り向く。澄んだ瞳はグレンとセリーナもしっかりと見詰めている。
再び、彼女は諸侯に向き直る。非難の声を上げる者はいない。
「そして、妾にはこの豪腕がある」
文字通り絹を裂く音がした。
エミリーは右腕を覆う布地を素手で引き裂く。純白のドレスが裂かれた下から、白くしなやかな、しかし、鍛えられていることがわかる引き締まった腕が露わになった。テーブルを殴りつけた右拳の甲などは皮が破れ、血が滲んでいる。それすらも見せつけるように固く握り、諸侯へと突き出す。
「二度にわたり、亡霊騎士を退け、『血風姫』ヴィルヘルミーネを叩き伏せた『鉄球姫』の腕だ」
彼女の言葉に、ジェファーソン伯が力強く頷いていた。
「皆はここに何をしに集まった? ヴェルンストの侵攻に対し、何を思い、願った?」
諸侯は沈黙し、応えない。何かを考え、目を伏せる者たちもいた。
「ベレスフォード公。貴様の言うことは正しい。だが、今、過去の罪を認めて引き下がる殊勝な態度など、何の役にも立たん。それならば、妾は開き直り、妾に逆らう奴らを返り討ちにしてでも、この国をまとめて戦う!」
エミリーの視線がベレスフォード公と絡み合う。
「妾に関わった者を死なせはしない。奪わせはしない。先刻、妾は言ったな。この国が何をもって成り立っているか。それは、貴公らと、妾たち……そして、さらに加えるならば、この国の根幹を支える国民たちによって成り立っている。妾はそれを知っている。多くの者により、支えられていることを知っている! だからこそ、これ以上、何一つ、ヴェルンストのケダモノどもに渡しはしない!!」
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(C) 瀬之本久史/集英社
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