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吸血の季節
砂浦俊一 イラスト/kyo
定価600円(税込)

甘く苦いくちづけ。
あの日、あの時、あの場所で、彼が見たのはふたりの秘めごとだった――。
「あなたから見て私は人間かしら、それとも吸血鬼?」
殴られ屋の高校生・鳴沢燈は偶然、少女たちの吸血行為を目撃する。それを境に燈の前に現れる正と負の境界線上の住人たち。吸血症の少女、血液の提供者、復讐鬼、エイリアンハンドの怪人。ある少女の死の真相が明かされるとき、ひとつの季節が終わりを迎える―――。
モノクロ  昼休み、県立皐月台高等学校の二年生、朱実紗衣は、クラスメイトの小見山鏡花の手首に唇を近づけた。
 いつものように両手を彼女の左手に添え、手首の小さな傷に唇を押し当て、歯をぶつけないように注意しつつ、優しく優しく吸いつく。ぷっくりと丸く膨れた赤い雫が紗衣の舌に乗る。頬を朱に染めた鏡花の脈拍と、自分の心音が重なっていくような感覚。
 ふたりだけの教室でそれは儀式のように密やかに、かつ秘めやかに行われていた。
 血を吸うことと、吸わせること。背筋にゾクゾクするような背徳感に溢れた時間を共有することだけがふたりの楽しみだった。
 もしも誰かが今この教室に入ってきたら。
 そんなスリルを味わいつつ、ひとしきり鏡花の手首から血を吸った紗衣は、続いて彼女の首筋に唇を這わせようとした。
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(C)kyo/集英社

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