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ノルマルク戦記1
滅びの星の皇子
赤城 毅 イラスト/小河原亮
定価650円(税込)
剣あり、魔法なし!
ノルマルク軍を待っていたのは新王デミアン率いる黒千騎隊の猛攻だった。父王オトフリート4世の不興を受け、幽閉の身にあった皇子ユリアスは隣国に落ち延び、祖国再興を誓う。運命に抗い立ち向かう、滅びの星のさだめの皇子ユリアス。鮮烈なる英雄譚、いま開幕する!
「われは、オトフリート四世の第二皇子ユリアスなり」
水晶の鐘を打ち鳴らすような声で、名乗りをあげた少年は、手にした長剣をかざした。
「叛逆の罪をおそれず、わが首を欲するものは、さらに射かけてくるがよい!」
挑戦的な言葉とともに、ぐいと胸をそらす。
朝日が、仮面の束縛から解放された少年の、気位の高そうな表情を照らしだした。
しかし、かくも凛列たるさまに臆してしまったのか、とうとう二の矢は放たれない。
そんな兵士のようすをみて、嘲笑するがごとく、唇の端をつりあげたのち。
少年は、高らかに笑った。
赫い髪の皇子――ユリアス・スウェン・アクセンシュルナは、誇らしい、自由の笑声を洩らしたのであった。
ノルマルク戦記2
異端者たちの軍旗
赤城 毅 イラスト/小河原亮
定価620円(税込)
運命に抗いし者たちの軍旗、今翻る!
死んだと思われていた兄ベルモンよりの密書、それはユリアスにベルモン軍麾下への合流を促すものであった。軍を持たぬユリアスは協力者を求め、わずかな供回りとともに旅立つ。己の運命に立ち向かうべく、射抜かれたサソリの軍旗を掲げ、ユリアスは疾駆する!
射抜かれたサソリ。
猛毒を有する尾の針も禍々しく描かれたサソリが、しかし、むざんにも、胴体を矢で射抜かれている。
あたかも自分の宿願を象徴しているかのような意匠の旗を、声も出せずに見つめているユリアスに、カーライが満足そうに声をかけた。
「どうだい、気に入ったか。皇子さんの軍旗だ。破蠍星の宿命を打ち破ろうという心意気にぴったりだろう」
「ああ……最高の軍旗だ」
ノルマルク戦記3
罪と罰の迷宮
赤城 毅 イラスト/小河原亮
定価600円(税込)
渾身のファンタジー・ロマン絶好調!
軍勢を率いて馳せ参じよという兄ベルモンの命に従いユリアスは、虐げられし騎遊民の兵団を組織し、次々に戦功をあげる。しかし、ユリアスを待っていたのは更なる苛烈な戦場と悲劇だった。
「……軍師どの。決断を下す前に、ひとつだけ聞いておこう」
こわばった表情のまま、自制心を振りしぼって、デミアンは言葉を発した。
「かの皇子……ユリアス・スウェンは、かつてノルマルクの宮廷にあったころのわれにとって、ただひとりの友であった。そのユリアスの心に傷口をうがち、罠にかけよと、そなたは言うのか?」
「いかにも。それによって、ノルマルク軍の団結は、水に降る雪よりも速やかに、消えてなくなりますゆえ」
平然と答えるヴァシュラフェルに、デミアンは激発した。
「ごめんこうむる! そんな邪道に頼ることはできぬ!!」
豪胆なリュバルトでさえも思わず、後ずさりしたくなるような怒声。されど、狂軍師は、一歩もひかぬ。
「これは妙、妙なことでござる。おかしや」
かえって、奇妙な節をつけて、はやし立てるがごとく応答した。
「何が、おかしいというのか」
いらだたしげに問うデミアンに、ヴァシュラフェルはかぶりを振ってみせる。
「聞くところによれば、王さまは、幼い頃に母上さまから引き離され、このような思いは二度としたくない。必ずや、誰も逆らうことができぬ、絶対の覇権を握ると誓われたとか」
「母のことは……言うな!」
ノルマルク戦記4
寂寞たる栄光
赤城 毅 イラスト/小河原亮
定価620円(税込)
滅びの皇子よ、われらを導け!連続刊行、絶好調!
老雄パッシェンダールを失い茫然自失のユリアスに兄ベルモンからロスラン攻略の命が下る! 軍団を支える支柱を失ったユリアス軍に勝機はあるのか? 逆境の中、ユリアスが掴んだ計とは? 託された想いを胸に、失意のユリアスは再び奮い立つ!
また、本営の要員を一騎当千の騎士だけに限っておけば、身軽に動けるだけの機動力を確保して、軽快な指揮が取れる。
そう考え、軍陣にのぞむ際でさえ、デミアンは供を最低限度にとどめておくのだったが、実のところ、かかる処置を選ぶ最大の理由は、この青年君主の美意識だったのかもしれぬ。
ともあれ、デミアンと少数の帝国士族たちは、いかにも精鋭らしい凄みを発しつつ、めざましい速さで北の門へと向かう。
やがて、彼らの兜の輝きを認めた衛兵が、背筋を伸ばし、槍の石突を鳴らして敬礼するのが見て取れた。
だが、そのなかで、ただ一人。
この緊迫した空気に、あまりにも不似合いな男が、門の前で待っていた。
ノルマルク戦記5
愛と哀しみの戦野
赤城 毅 イラスト/小河原亮
定価600円(税込)
ついに、両雄相撃つ!そのときユリアスは…?!
ガルバンティア大陸統一を目前とするパルティスカ王デミアン、ノルマルク復興のため立ち上がった皇太子ベルモン。両雄は雌雄を決するべく軍を進める。だがユリアスは輝かしすぎる戦績が災いし、主戦場を離れ逡巡していた…。
「どうしたの、ユリアス。何を考えているのです?」
軽やかな声で聞かれ、ユリアスがはっと顔をあげると、スミレ色の瞳が、こちらをとがめるように、にらんでいる。
ホーエンヒルト家の姫君、「妖精姫」とあだ名される美少女フィンレイであった。
その横では、ユリアスの小姓のようにして、常に付き従っている騎遊民の少年ジュブカが、姫さまのおっしゃる通りと、口をとがらせている。
「あ、ああ……済まない。少し考えごとを」
「済まないではありませぬ」
フィンレイは、弁解しようとしたユリアスの言葉を、ぴしゃりとさえぎった。
「総大将ともあろうものが上の空では、勝てるいくさも勝てません。ましてや、トイトニアを」
ノルマルク戦記6
挽歌の彼方へ
赤城 毅 イラスト/小河原亮
定価600円(税込)
ついに、両雄相撃つ!そのときユリアスは…?!
勝敗は決した。しかしデミアンは最後の決着をつけるためユリアスに一騎打ちを挑む。歴史はいまだ血を欲していた…。新王ベルモンは、強敵の消えた今、弟を「逆賊」として密殺するつもりだった。王の招喚を受け、ユリアス一行はロスランへと馬を走らせるが……。
汚れた玉座を守るためならば、いかなる策謀を用いても恥じぬというのなら。
おれは戦う。
おのれの信じた正義をつらぬくために。
自分ではどうにもならぬ生まれ育ちに泣くものがいない、輝ける国を築くために。
ベルモン・メルシナ。
もはや、そなたは兄ではない。
乗り越えるべき宿命。
倒すべき――敵。
「シドゥ、そなたの死を無駄にはしない」
ユリアスは叫んだ。
みなが涙に濡れた顔を上げ、見守るなか、死者のもとにまで届けと、声を張り上げた。
「おれは、ベルモン王を討つ。そして、王も貴族もない、誰もが望んだままに生きられる世界を実現するのだ!」
それは、おそるべき叛乱の誓約であった。
けれど、異議をとなえるものは、一人もいない。
もちろん、あらたな戦争、あらたな流血は、厭わしくはある。
が、このまま、ベルモンの暴虐を許していれば、暗黒の王国が成立し、騎遊民たちは、ノルマルク再興以前と同じく、ひととしての尊厳を否定され、最低の暮らしに呻吟することになるであろう。
さような事態の到来を座視することは、今日に至るまでの、さまざまな戦いにおいて、いのちを捧げてきたものの魂への冒涜にほかならない。
だからこそ、全員がうなずきあい、さらには、森の彼方の炎さえも、ひときわ大きく揺れて、賛意を示したかに思われた。
シドゥが残した誠の焔は、ユリアスたちの魂をも揺るがし、ついにはガルバンティア大陸全土を包まんとしていたのである。
ノルマルク戦記7
滅びの星輝くとき
赤城 毅 イラスト/小河原亮
定価620円(税込)
7巻シリーズ完結 さらばユリアス!
六年の歳月を経て「赤城毅」渾身のハード・ファンタジー堂々完結! 数々の戦いと死、裏切りを乗り越えて、剣あり魔法なし、の正統派戦記がどう決着するのか? 6巻、7巻同時発売、2冊とも初出書き下ろし。ノルマルク王国とユリアスの驚愕と感動のラストをお楽しみ下さい。
赤、青、黄、白、黒、緑、茶、金、銀、灰……そして、紅。
騎遊民十一氏族のそれぞれを象徴する帯が、風にたなびいて、軍旗を飾っている。
すべての騎遊民が、ユリアスのもとに結集したことを、何よりも雄弁に物語る旗印であった。
「おれたち七人の背中には、ガルバンティア大陸じゅうの騎遊民がいて、後押ししてくれている。何も恐れるものはないさ」
カーライの言葉に、ジュブカが誇らしげにうなずいた。
フィンレイやエクマン、ギルゼンシュターン兄弟らも、憂色が消えて、すっかり晴れ晴れとした表情になっている。
統率の妙をみせたというべきか。
紅の族長カーライは、ただ一振りの旗をもって、沈滞していた一行の士気を回復してのけたのだった。
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(C) 小河原亮/集英社
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