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蘭堂家の人々
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
近くの親戚より、見知らぬ美(少)女
蘭堂翔太は、天才科学者な母の帰りを待つ15歳。そんなある日、構成員約一名の蘭堂家に、美人家政婦・イリア&美少女転校生・アテナが転がり込んできた! あるイミお約束通りに同居生活が始まったのだけれど、その日を境に翔太の周りで次々に奇妙な事件が起こり始めて!?
コンパクトなミラーで前髪の乱れを整え、少女は何ごともなかったかのように歩き出した。少し短めのプリーツスカートから伸びた健康的な脚が、大きなコンパスを刻んで坂道を登っていく。翔太は自分のカバンを拾って少女を追いかけ、おずおずと声をかけた。
「あ、あの、きみ――」
「ん? なぁに?」
「そんなのんびり歩いてると……遅刻しちゃうんじゃ――」
「ああ、別にいいのよ、わたしは。――だってわたし、転校生だもん」
「て、転校生……?」
「そ」
肩越しに翔太を見やり、少女は目を細めて悪戯っぽく笑った。ちょっと勝ち気でコケティッシュで、何より明るいその笑顔は、同世代の男の子に不意討ち気味に差し向けたら、100人中ほぼ100人とも、言葉を失ってぽ〜っと見とれてしまうに違いない。
蘭堂家の人々 One More Kiss
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
家庭円満って、やっぱりムズカシイ!?
蘭堂家の構成員が4名になってひと月。いよいよ鼻血が止まらない秀才中学生・蘭堂翔太のクラスに、またもや新たな美少女が!! 行方不明の母にどこか似た、蠱惑的な留学生ザビーネ。急速に親密になるふたりに、アテナの胸中は大嵐! 一方、『友愛団』も再び暗躍を始め…!?
「どうもはじめまして。ザビーネ・ベブルスブルク・マイリンクです」
あらためてそう名乗った留学生は、お調子者の雅明でさえ一瞬言葉を失ったほどの美少女だった。
みんなが驚くほどの美少女転校生ということなら、それはアテナも同じだった。
ただ、アテナの時とはクラス全体の空気が違う。最初からクラスに溶け込もうとして親しみやすさ全開で現れたアテナに対し、このザビーネという少女には、何となく声をかけがたい、ある種の高貴さにも通じる独特の雰囲気というか、近寄りがたさがあった。
「みなさん、どうかよろしくおねがいします」
もう一度お辞儀するのに合わせて揺れた肩までの長さの髪が、さらさらと澄んだ音をさせている。色素の薄い唇からこぼれ出てくる日本語は、決して上手とはいえなかったけれど、かえってそこに彼女の真摯さが窺えて、結局、それがクラスメイトたちの緊張をほぐしてくれたようだった。
蘭堂家の人々 Kiss From Heaven
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
わたしたちが、ずっと、守ってあげる。
悩める翔太を元気づけようと、アテナたちは彼を連れ出し真夏のプールへ! 一方、エリザベトの最後の研究“アダム”を狙う『友愛団』の最終作戦が始動して……? ついに現れた四人目の“遠くの親戚”、家族に生じ始めた不協和音、そして蘭堂家を襲う衝撃の真実とは――!?
「とうとう……この日が来てしまいましたのね」
「うん」
ふたりでかわりばんこに涙を拭いているうちに、フェイのハンカチはすぐにぐっしょりになってしまった。熱く湿ったハンカチを見つめ、アテナはぽつりともらした。
「……わたしたちの身体はユーレイのカタマリでできてるけど、それじゃこの涙は何でできてるのかしら?」
「知りませんわ、そんなこと。……興味もありません」
ティッシュでち〜んと鼻をかみ、フェイはアテナの手からハンカチを奪い返した。
「――人のハンカチをこんなにして……アテナさん、女の子なのにハンカチくらい持ってらっしゃらないの?」
「あなたが貸してくれたから使っただけじゃないの。自分だって使ったくせに。……ハンカチくらい持ってるわよ。ほら、貸してあげる」
可愛らしいネコの刺繍が入ったハンカチをフェイの頭に載せ、アテナは目もとを覆って嘆息した。
蘭堂家の人々 Sweet Little Pain
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価600円(税込)
蘭堂家を狙う“中華的美少女暴君”登場!
自分の正体を知り、それでも“家族”とともに生きていくことを決意した翔太。蘭堂家にもようやく平穏な日々が……と思いきや、翔太とアテナの急接近に、フェイの心は揺れ動く。そんな蘭堂家を新たなる敵が襲う!
大人気ファンタジック・アクションコメディ、新章突入!!
「そのへんにしておけ」
絡み合うアテナとフェイの視線の間に、突然、見事な小麦色の脚線美がぬうっと割り込んできた。
「いずれにしろ、翔太をほったらかしにしておくというのは感心しないな。……『友愛団』のハーゲンが何者かに命を狙われたという話はおまえたちも知っているだろう?」
「……迂闊でしたわ」
サリーの指摘に、フェイが粛々とうつむいた。
蘭堂家へお中元を届けにきたハーゲンが、その帰り道に殺されかけたというハナシは、フェイやアテナもすでに聞いている。誰の仕業かは知らないけど、この町にそういう物騒なことをしでかす連中が入り込んできていることだけは間違いない。
「……まあいい。続きがやりたければ人目がないところでやれ。その間、わたしは翔太にオイルでも塗ってもらうとしよう」
「ちょ、ちょっと! 待ちなさいよ、サリー!」
アテナは慌てて水から上がり、ゴールドチェーンのアンクレットを揺らして歩いていくサリーの手を掴んだ。
蘭堂家の人々 Bittersweet Rain
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
家族がひとつになる日は、いつ……?
さらわれたフェイを取り戻すべく、『華龍門』に挑んだ翔太たち。だが、美少女総帥・シャンフェイに返り討ちにされ、フェイ奪還に失敗。サリーまでが深手を負ってしまう。そんな翔太たちの前に“五番目の女神”な極道小学生・ペペが現れた!! そのワガママぶりに、翔太がついに……!?
「……こういういい方はしたくないんですけど、あの子はきっと、失敗作です」
「翔太さん――」
イリアはひときわ大きな溜息とともに立ち上がった。
「……翔太さんがそこまでいうなら仕方ないわね。何があったのか無理に聞こうとは思わないし、理由も判らずに、ただ仲直りしろともいえないし。――でも、ペペをこの家に置くことだけは許してもらえるでしょう?」
「それは……まあ」
「ありがと」
イリアは来た時と同じように静かに障子を開け、翔太の部屋を出た。
「――翔太さん」
「何です?」
「あなたはペペのいったことが許せないって怒っているみたいだけど、だったら、あなたがさっきいったことも、わたしはちょっとどうかと思うの」
「――――」
翔太は思わず後ろを振り返った。
障子の向こうにイリアのシルエットが立っていたけれど、当然、その表情は見えない。
「――でも、わたしはそれを許すわ」
イリアの口ぶりには、怒っているようなところはまったくなかった。むしろ、おいたをしちゃったコドモをたしなめるような、そんなやさしささえ感じる。
蘭堂家の人々 Sweet Home Again
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
『華龍門』編、ついにクライマックス!
囚われの身のフェイは、『華龍門』の幼帝シャンフェイの孤独を知り、その境遇に同情を覚え始めていた。一方翔太たちは、ザビーネの力を借りてフェイ救出作戦を計画するが、その頃『華龍門』の内部では、独断的なシャンフェイとルンに対する反感が高まっていて……!?
フェイは何もいわず、溜息混じりに瞳を伏せ、シャンフェイの手を握り返した。
「アーフェイ……! 予を嫌いにならないでくれるか?」
うるうると瞳を潤ませ、シャンフェイはフェイの顔をじっと見上げた。
「……食べましょう。お茶が冷めるわ」
シャンフェイの頭をそっと撫で、フェイは椅子に座り直した。
要するに――シャンフェイは普通の子供ではないのだ。
許すとか許さないとかいう以前に、たぶんシャンフェイは、他人に謝るということを知らないのだ。
蘭堂家の人々 Goddess of Darkness
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
新章突入、ファンタジック・アクションコメディ。
天才中学生にだって悩みはある。受験をひかえた蘭堂翔太のことを嗅ぎ回る謎の美女が氷川町に現れる。またもやどこかの組織が翔太を狙って動きだしたのか? ひそかに調査に乗り出す“女神”たち。だが、彼女たちの前に現れたのは想像を絶する“強敵”だった……。
女は無言のまま、カメラのレンズを思わせる冷たい瞳で男たちを静かに見つめ、その豊かなブロンドを軽く手で払った。
じゃらじゃらじゃら――。
彼女の動きに合わせて、その足元に細かい金属のカタマリがこぼれ落ちる。
美女の魅惑の肢体に傷ひとつつけることもできず、無様にひしゃげた無数の弾丸だった。
「ひ――」
誰かが声にならない悲鳴をほとばしらせたのが、結果的にはきっかけになった。
ひしゅんっ!
至近距離からの銃撃にもびくともしなかった女が不意に身体を丸めたと思ったら、その全身から金色の光の針がほとばしった。
蘭堂家の人々 Goddess of Innocence
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
せめて人間らしく生きようと思っていたのに――。
不老不死となり、人間らしく生きる道を閉ざされた蘭堂翔太。たそがれる翔太に家族たちもかける言葉が見つからない。そんな時、謎の女“ブラフマーニー”たちは、翔太たちを消去するため、あらたな“女神”を生み出そうとしていた!ファンタジック・アクションコメディ!
「……ぷっ」
トーマとヒルダを横目に見上げたザビーネは、まったく同じように口を半開きにしたふたりの表情に、思わず噴き出してしまった。
「? どうしたの、ザビーネ」
オペラグラス式の電子双眼鏡を目もとからはずし、ヒルダは義妹を見やった。
「いえ、別に」
そう答えながらも、ザビーネは薔薇の唇にイタズラっぽい笑みをたたえてトーマの顔を見上げている。
その視線を何とはなしに目で追いかけたヒルダは、トーマの間の抜けた表情に気づいて眉をひそめた。自分もついさっきまで同じような表情を見せていたという自覚はカケラもないらしい。
「ちょっと! その顔で無様にほうけないでくれる、おにいさま? こっちが恥ずかしくなってくるわ」
蘭堂家の人々 Goddess of the Earth
嬉野秋彦 イラスト/日向悠二
定価620円(税込)
家族の戦い、ここに完結!
ブラフマーニーとの戦いで深く傷つき眠りについたままのアテナ。だが、黒いディーヴァたちはいよいよ真の目的のために活動を開始した。彼女たちの狙いを知った翔太たちは、絶望的な状況の中、最後の戦いへとおもむく。彼らを待つ最後の戦場とは――? ついに完結!
どぱぱぱぱぱ!
プランローチャたちの右手が軽く変形し、細い銃口となってまばゆい光弾をまき散らした。この程度の火力ではカドルーに傷ひとつ負わせることはできないだろうが、それでもカドルーは高速で移動し、全方位からの一斉射撃を回避した。
ぎゅるっ!
背中に黒い翼を生やして空へ逃れたカドルーの右手には、ひと振りの剣が握られていた。細かい節で無数に分割され、鱗をきらめかせてうねうねとくねる大蛇のような剣だ。
その剣が瞬間的に三倍の長さに伸び、銃口を空に向けたプランローチャを横殴りに打ち据えた。
ばぐっ!
重い鈍器でブン殴られたかのように、プランローチャが一体、乾いた大地にめり込んで動かなくなった。やはりカドルーとの戦闘力の差は歴然だ。
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(C) 日向悠二/集英社
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