HOME > ライブラリー > 影≒光
BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
影≒光 シャドウ・ライト
影名浅海 イラスト/植田 亮
定価670円(税込)
陰陽術師、双子の姉弟の絆! 新人賞佳作受賞!
陰陽師の家系に生まれた星之宮光輝と御影という双子。姉の御影は陰陽術師としての呪力を人並み以上に持ち、弟の光輝は逆にまったく持たず、当主の父から『能無し』と罵られて育った。父を見返し姉と共に働くため光輝はイギリスに旅立ち、『精霊術』を身につけ帰国した。
モノクロ  玄関の前に立つと、光輝はじっとその景色を眺めていた。
「――懐かしい?」
 町の風景を眺めているように見ていたので、御影が後ろからそう声をかけた。光輝は頷いて、帰り道を歩いていたときのように、「それでもやっぱり何処か違うような気がする」と家の外観に違和感を訴えた。
「ねえ、早く中に入ろう。お母さんが待って――」
 引き戸を引こうとした瞬間、向こうからダダダッと何かが迫ってくる音がして勢いよく戸が開いた。
「コウちゃーん!!」
「ふぐっ!」
 御影は中から飛び出してきたモノに弾かれ、光輝はそれに抱きつかれた。

BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
影≒光 シャドウ・ライト 英国編
影名浅海 イラスト/植田 亮
定価680円(税込)
スーパーダッシュ小説新人賞受賞シリーズ!
陰陽師の家に生まれた双子の姉弟。父との対決に敗れて己の未熟さを痛感した光輝は、修行の旅を再会するためイギリスへと戻ってきた。師匠のルーシーは早速光輝を連れ出し、魔術学院に持ち込まれる高額報酬の依頼を受ける。依頼者は有名な錬金術師、事件は連続大量殺人。
モノクロ 「あの……入ります」
 光輝はノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開いた。
 部屋の奥の壁際の机。そこに金色の長い髪の少女が、背を向けて座っていた。軽くウェーブのかかった金髪は窓から射し込む陽光に、硝子の破片を散りばめたように煌いて、とても美しい。光輝はこの髪に憧れて自分も髪を金に染めたのだ。しかし今はその美しさに浸る余裕は無い。師匠の背中からひしひしと伝わってくる拒絶の意思が、光輝の額に汗をにじませた。
「あの……師匠?」
 精一杯の勇気を振り絞って部屋の中に踏み込む。すると唐突に少女は左手を水平に上げ、
「――汝の自由は我が手に」
 呟き、指を鳴らす。直後――。
「――――っ!?」
 避ける暇など無かった。光輝の足元に黒い魔法円が浮かび上がり、円に内接する六芒星の頂点から鎖が跳び出し、両腕、両足に絡みついて動きを封じる――この一連の出来事が、音が消えるより前に起こった。
「お、おい、師匠! 何の連絡も入れずに一ヶ月も戻ってこなかったのは――」
『悪かったけど、だからっていきなり魔術はねえだろ!』と続くはずだった言葉は、耳元を通り過ぎた風斬り音によって遮られた。一瞬遅れて後ろから、ダンッ、という音――。
 光輝は唯一動く首を回して見る。後ろの、自分の部屋のドアにダーツが突き刺さり、その周りひび割れている。
 あれはただのダーツじゃない。――師匠手製の魔術武器、『スティンガー』だ。
「修行じゃないときは名前で呼べって言ってんでしょ? 本当、物覚えの悪い弟子で困るわぁ」
 耳を突き刺されるような棘のある声に振り返ると、そこには人形が――いや、人形と見間違うほどに美しい少女が、椅子を回してこちらに向き直っていた。

BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
影≒光 シャドウ・ライト 陰陽編
影名浅海 イラスト/植田 亮
定価700円(税込)
スーパーダッシュ小説新人賞受賞シリーズ!
陰陽師の家に生まれた双子の姉弟。期末試験前の必死の勉強をする御影に、母から電話が入った。同じ退魔師の家が何者かに滅ぼされ、『星之宮』に退魔の代行と犯人討伐の依頼がきたという。仕事を進めるうちに、御影は犯人らしき人物の弟と合流し、事件の解決を目指す。
モノクロ 「ねえ、御影ちゃん、起きてよぉ……もう朝だよ」
 那美は床に敷いた布団の上の、ブランケットの塊を揺り動かす。
「……ううん」
 ブランケットの塊が呻きを上げて、逃れるように転がる。その拍子にブランケットが少し捲れた。隙間から長い黒髪の少女――御影の寝顔が覗く。余程素敵な夢を見ているのか――彼女の寝顔は本当に幸せそうで、起こすのを躊躇ってしまうほどなのだが、そうもいかない。
 何故なら今日は月曜日――時計の針は午前七時十分を差している。学校に行くだけだったら充分に余裕の時刻なのだが、朝食を食べる時間やら、身支度を整える時間やらを考えると、そう余裕があるわけでもない。
「御影ちゃん、本当にもう起きてよぉ――今日学校あるんだよ? このままだと遅刻しちゃうんだよ?」
「ううん……」
 那美がさっきより強めに御影の身体を揺らすが、効果無し。御影はまた小さく呻いて、ごろんと寝返りを打つ。敷き布団から転げ落ちて、結構な衝撃を受けたと思うのだが――床にカーペットが敷かれているためか、それともブランケットに包まれているためか。どちらにせよ、彼女は一向に目を覚ましそうに無かった。
「……ダメだ……やっぱり、起きない」

BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
影≒光 シャドウ・ライト 激突編
影名浅海 イラスト/植田 亮
定価540円(税込)
スーパーダッシュ小説新人賞受賞シリーズ!
陰陽師の家に生まれた双子の姉弟。夏休み、御影は光輝に会うためイギリスへと渡った。唐突な来訪に驚きつつも素直に喜ぶ光輝に対して、ルーシーは不機嫌そのもの。翌日訪れた森の秘境で氷に閉ざされた女性を発見。ルーシーが止める間も無く御影は女性を救い出した。
モノクロ  澪は空き袋が散乱している部屋の様子を見渡して、娘に訊ねる。
「もう旅行の準備は終わったの?」
「うん、大体ね――あとは空港でお金を換金するぐらいかな」
「あら、そうなの? 今頃慌ててるんじゃないかと思って見に来たんだけど、杞憂だったみたいね」
 澪はとことこと御影の傍に寄って座る。近くに置いてあったイギリスのガイドブックを見つけると、手に取ってぺらぺらと捲った。
「いいなぁ……私も一緒に行ってコウちゃんに会いたいなぁ……」
 本当に羨ましそうに澪は言う。そんな母が子供みたいに見えて、娘は思わずくすっと笑ってしまった。
「えへへ……ごめんね、お母さん」
「ううん。だけどその代わり――」
 澪はそこで言葉を切り、がしっと娘の手を力強く掴む。
「――コウちゃんの写真一杯撮ってきてね!」
「う、うん……わ、解ってるから……」
 間近に迫った母の顔に少し身を退きながら、御影は小刻みに何度も頷いた。
「ホント、よろしくお願いね? お母さん、すっごく楽しみにしてるから」

BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
影≒光 シャドウ・ライト 暴走編
影名浅海 イラスト/植田 亮
定価630円(税込)
本気で求めているのなら 人は幸せになれると思うんだ。
魔術修行中の光輝を訪ね、イギリスにやってきた御影は、光輝をめぐり光輝の師匠のルーシーと衝突ばかり。秘境の森で氷漬けにされ、捕らわれていた魔術師ジュエルを家に送り届けて一件落着かと思いきや、三人の前にルーシーの師匠ルリアが現れ、とある頼みごとをする。そして事件がまた!?。
モノクロ 「――ところで、光輝」
 振り返ったルリアと目が合った。澄んだ水色の瞳には何かを企む微笑がにじんでいる。
「面白い昔話があるの。ちょっと聞いてくれる?」
「――え? あ、まぁ……いいですけど」
 何で急に昔話なんてするのか――光輝は不思議に思ったが、別に聞きたくない理由もなかったので頷いた。横で僅かに色を失くしているルーシーなど気づかずに――。
「ありがとう。それじゃ聞いてね。まあ簡単に言うと、このお話は魔法使いを目指す小さな女の子がお師匠様である三つ年上の少年に――むぐっ」
 ルリアの口は電光石火の素早さで椅子から立ち上がり彼女の間近に迫ったルーシーの手によって塞がれていた。ルーシーの顔は耳まで赤く染まっており、細く開かれた唇からは乱れた吐息が漏れている。ルリアはルーシーの手を剥がすと、不満そうに口を尖らせる。
「何よ、まだあらすじ言い終わってないじゃない。聞きたくない――もしくは聞かせたくない話かどうかなんてまだ解らないでしょ?」

BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
影≒光 シャドウ・ライト 突破編
影名浅海 イラスト/植田 亮
定価680円(税込)
お前の感じてる痛み、全部消し去ってやるよ
ミンティを連れて学院に向かっている光輝たち一行は途中、“花の街”ハロゲイトに到着する。いつものように御影とルーシーが光輝の主導権を争う中、ひとりミンティだけが浮かない顔をする。そうハロゲイトはミンティにとって忘れられない街だった――。ひとつのリボンがミンティ・ジュエル・ベルタの三人を結びつけ、絡み合った三者のわだかまりを陰陽師の双子の姉弟が解きほぐす……。
モノクロ  ルーシーは近頃――正確に言えば四日前からかつてないほど機嫌の悪い日が続いていたのだが、今の彼女はとても機嫌が良かった。
 何故なら――――。
 ルーシーは何処までも真っ直ぐ正面に伸びる道から、ちらっと上のバックミラーの方に目を移す。本来、車の後方を確認するために備えられているそれは、不自然なほどに下を向いて後部座席の左端――丁度、ルーシーが座る運転席の真後ろに座る少女の姿を映し出していた。
 絹糸のような艶と滑らかさを持つ黒髪を長く伸ばし、顔立ちは大和撫子という言葉を体現したかのような淑やかで可憐な東洋の風貌。白いTシャツの上に桜色のパーカー、デニムのロングスカートという服装の少女――星之宮御影。ルーシーと同じく、やはりその容姿からは想像出来ないが彼女もまた神秘を具現化する日本の呪術師――五行の理を以て妖魔を祓う陰陽師である。
 そして今――彼女の表情は困惑に満ちていた。その表情たるや、まるで百年かけても解けない難題を突きつけられたかのよう。
 そんな彼女の表情を鏡越しに一瞥したルーシーはサッと顔を正面に戻し――途端、その唇に微笑を滲ませた。
 ――これが彼女の機嫌のいい理由である。


このページのトップへ