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吟遊詩人に贈る歌
佐々之青々 イラスト/COMTA
定価650円(税込) |
| 歌は願いを叶え、想いを告げる。
若き吟遊詩人と魔法人形が奏でる
ピュアファンタジー、開演! |
「世界で一番の吟遊詩人になって、必ず戻ってくる」
十二歳のレントは、幼なじみのトルチにそう約束して街を出た。五年後、トルチに告げる言葉を胸に帰ってきたレントはしかし、再会する前に幽霊騒ぎに巻き込まれ、女警吏のテアに騒乱罪で捕らえられてしまう。テアに幽霊退治を押しつけられたレントは取調室でやっとトルチと再会するも、告げる言葉を言えずにいるうちに今度はトルチを想う青年デリックから決闘を申し込まれ――悲劇の吟遊詩人と悲恋の騎士を生んだ街ルネスでおこる、“約束”の物語。 |
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「やっぱりね! 朝の約束、少しも覚えてないって顔してるわ」
トルチは不機嫌に不満を上乗せした顔になり、両手をすっと伸ばしてきた。
「いててててっ」
両頬を抓られる。
「ほら思い出しなさいっ」
「てて――じゃねえっ」
なんとかトルチの手を振りほどくと、レントはひりひり痛む頬をさすりながら、
「約束ってなんだよっ? また劇場の時みたく言い忘れてるんじゃ……すいません」
「思い出したわね? なら立って、下にいくわよ」
トルチは不機嫌を三割減じた顔で言って、一歩離れた。
そうして初めて、幼なじみの全身がレントの目に映る。
裾がふわりと、トルチは淡い水色のワンピースを着ていた。一枚の布から作ったような単純な作りで、簡素な飾り布が襟と袖だけというワンピースを。
「…………」
頬をさすっていたレントの手が、思わず止まる。
「何よ?」
トルチがじとりと睨んできた。
「あ、いや……なんでもない」
「……ならいくわよ。早くっ」
なぜだか不機嫌がまた三割増えて、トルチは踵を返す。レントはわけがわからないままに立ち上がり、幼なじみを追いかけた。
座ってろと命じ忘れた魔法人形も、一緒に階段を下りていく。 |
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