HOME > ライブラリー > 終わりなき夏
BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
終わりなき夏 永遠なる音律(上)
砂浦俊一 原作/ファイアージュ イラスト/日向恭介
定価650円(税込)
俺たちは忘れない、あの日差しの下で交わした約束を――
都会の喧噪とはかけ離れた片田舎の穏やかな村。冬馬巧は妹のような存在である小鳥遊澪、一見しっかり者だがドジっ子の雨宮歌音と奇妙な共同生活を送っていた。そして、音楽部部長の大上律子を加えた4人で弦楽四重奏を組み、村の芸術祭に参加するため練習に勤しんでいく――。ファイアージュ原作の人気ゲームを初のノベライズ化!
モノクロ 「今年の須野村芸術祭に――我らが朝木学園須野分校音楽部は『皇帝』で参加する!」
 律子先輩は、そう高らかに宣言した。
 須野村芸術祭は、去年から夏に開催されるようになったお祭りだ。村の内外からなんとなく芸術っぽいものを集め、展示し、披露し合うものだ。メインとなる芸術発表では、歌自慢、創作詩文の朗読、漫才、落語、なんでもござれだ。
「皇帝って、ハイドンの?」と歌音。
 フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの弦楽四重奏曲第77番ハ長調『皇帝』。ハイドンの最高傑作とも言われる曲だ。『皇帝』の名で知られているメロディーやドイツ国歌はこれの第二楽章にあたる。元々はオーストリア皇帝を称える詩に曲をつけたものだが、故郷が他国の軍に攻め込まれた日、ハイドンは最後までこの曲を弾き続け、戦う意思、抵抗する意思を訴え続けた。
「そうだ。『皇帝』の曲の勇壮さ、壮大さ、オレたちに相応しいだろう?」
 満面の笑みで律子先輩は俺たちの顔を見渡しているが……あがり症で人見知りをする澪、感情の起伏が少なくいつも冷静な歌音、そして俺。勇壮とか壮大にはほど遠いような……。
「なによりも題名がいい。『皇帝』だなんてオレのためにある曲だよな! これが『女帝』ならなお良かったのに」
 たったひとりで『皇帝』の曲のイメージを担う律子先輩らしい発言だ。

BOOKNAVIはこちら
ロゴ イラスト
終わりなき夏 永遠なる音律(下)
砂浦俊一 原作/ファイアージュ イラスト/日向恭介
定価650円(税込)
様々な試練を巧たちは乗り切れるのか――感動の完結!!
澪の東京行きが延期され、ほっと胸をなで下ろす音楽部一同。巧は廃校式で演奏することが決まったオリジナルの曲作りに勤しみ、他の部員は演奏の練習に励んでいた。だが、台風による土砂崩れが起こり、楽器もろとも部室が埋まってしまう。廃校式の開催日が迫る中、巧たちはこのピンチを切り抜けることが出来るのか──!?
モノクロ 「はい巧。あーん」
「巧さん、あーんしてください」
 そして歌音も澪も、わざわざ茶碗と箸を持って、俺に食べさせようとする。
「いや、ふたりとも。いつも言ってるけど右手は動かせるから食べさせてもらう必要は……」
「巧さん、お茶碗を持たないのは行儀が悪いです」
「それに恥ずかしいから、いいって……」
「巧はケガ人なんだから恥ずかしがる必要はない。堂々としていればいい」
 俺の口へ箸でご飯を運ぼうとする澪と歌音。そして、この光景をじっと見ている折原、可憐、リーゼ、それに隆。……みんなの視線が刺さるようだ。
「そうです、歌音部長の言う通りですっ。巧さんはおとなしく食べればいいんですっ」
 可憐が箸で摘んだ野菜炒めが俺の前まで運ぶ。おいおい、可憐まで……。
「なるほど。巧が誰の箸に最初に口をつけるのか勝負なのですね。リーゼも参加するです!」
 リーゼまで面白がって箸を伸ばしたが、まだ上手に使えないから、指が震えてすぐにちゃぶ台の上に落としてしまう。
「話にゃ聞いていたが……羨ましいとかズルイとか通り越して、面白い見世物だな」と隆。
 うるせえ。他人事だと思いやがって……。
 この光景を前にして、無言の折原は呆れたような、いいや蔑む目で俺を見ている。
(C)φage

このページのトップへ