第13回スーパーダッシュ小説新人賞最終選考結果発表!

厳正なる審査の結果、以下の4作品が受賞となりました。

大賞

『ファーレンハイト9999』朝倉 勲

優秀賞

『アプリコット・レッド』北國 ばらっど

『現し彩なす』持崎 湯葉

特別賞

『カオス・ガーデン 〜プロジェクト ブライダル〜』延野 正行

受賞作は今秋刊行予定です。お楽しみに!

選考委員選評&受賞者コメント

ファーレンハイト9999

朝倉 勲(あさくら・いさお)(29歳)
【著者プロフィール】
1984年3月31日生まれ。北海道出身、在住。
【受賞コメント】
栄えある大賞に選出いただきまして、まことにありがとうございます。 連絡をいただいた時には「夢ではないか」「自分は正気か」と疑いましたが、この文章を書いて今ようやく現実感を得ることができました。
こうしていざ受賞に際すると、感謝の思いしか浮かびません。
選考していただいた方々はもちろん、家族や友人、先輩、同僚、これまでお世話になった方々……それと、リミット寸前の郵便局で封 筒をくださった方。誰ひとりが欠けてもこの作品は完成しませんでした。
「読んでよかった」、そう思っていただけるような作品を書きつづけていけるよう、邁進していく所存です。
重ねて、この度はありがとうございました。
これから末永く、みなさまの応援をいただけましたら幸いです。
【概要】
アニメ、漫画、ゲーム、ラノベ、フィギュア——。現代の日本ではそれらすべてが規制の対象となっていた。所持数は厳しく制限され、違反者は逮捕されるまでに。もはや現代においてオタクは"合法的な差別対象"でしかなかった。
そんな中で警視庁に新設された"オタクを取り締まる機関"焚書課。高校生捜査官・維刀臥人は、中学生の先輩・奏手イリナとともに違反者を検挙し続けていた。が、隠れオタクである臥人はその裏で焚書課を裏切っていた。規制に反逆する白衣の聖堂騎士・エルガットとして単身政府に抵抗していたのだ。
最強の捜査官ハンターとして戦い続ける臥人。彼はある日、自分と同じように政府に抗う赤い服の女性レディ・プラムに「『東のサン・キュロット』という反政府組織の無差別テロを阻止してくれ」という依頼を受ける。
情報を不審がる臥人。だが、レディの差し出した一枚の写真を目にした途端、その視線が固まった。
「こ、……これ」
「そう、核爆弾」
告げられたのは「東のサン・キュロットは核武装している」という最悪の情報……。
臥人は焚書課捜査官としての、また聖堂騎士エルガットとしての二つの顔を使い分け、組織へと、真実へと迫ってゆく。
日本史上最悪のテロを阻止するために——。

アプリコット・レッド

北國 ばらっど(きたぐに・ばらっど)(24歳)
【著者プロフィール】
1989年5月21日生まれ。北海道出身、在住。
【受賞コメント】
はじめまして、北國ばらっどと申します。
このたびは身に余るほどの評価を頂いて、喜びと緊張と同様のあまりに熱を出す程でした。自分の作品とそのキャラクター達は、言うなれば自分の子供達のようなもので、それが評価して頂けたという事実は、お話を産んだ人間としてはこれ以上ない幸せです。
今はまだ作家未満、見習いの卵のような自分ですが、頭の中で描いた空想、妄想の世界を多くの人に目にして頂ける機会を得た事は、何にも代えがたい宝物と思います。「ありがとうございます」以上の言葉を作り出せない自分がもどかしい程です。以後も、精進させて頂きます。
【あらすじ】
近未来。進化し過ぎた人類は「感動」が無くては死にいたる生命体に成り果てていた。その結果、アーティストやクリエイターと呼ばれる者達の地位は向上。量子通信によって広がる作品投稿型SNS「ミュージアム」が流行し、そのユーザーからの評価が重要な価値を占める社会が生まれていた。
そんな世の中で、ミューズ芸術学院に通う女装少年、沖本小町は、夜の路地裏で闘う少女の姿を目撃する。それはミュージアムで人気を博しているキャラクター、「スケルトン・リリィ」の姿そのものだった。信じがたい光景を目の当たりにした小町に追い打ちをかけるように、「美術科の魔女」と呼ばれる上級生、築波夕莉が接触し、事件が始まる。
現実世界に抜けだして動き出すイラスト。街中に増え始めたラクガキ。空を覆うように張り巡らされた電線。「デザインドール」と呼ばれる特殊能力。アーティストたちに蔓延するスランプ。噂の中で跋扈する怪人。廃ビルの怪奇現象。迫る文化祭。百合気質のストーカー。そして人気SNS「ミュージアム」の真の姿。
特殊能力を操るアーティスト達と共に、小町が事件の真相に辿りつく時、全ての謎が一本の線に繋がり、一枚の真実が描かれる。

現し彩なす

持崎 湯葉(もちざき・ゆば)(22歳)
【著者プロフィール】
1991年3月6日生まれ。栃木県出身、東京都在住。
【受賞コメント】
初めまして、持崎湯葉です。この度はこのような栄誉ある賞を頂き、誠に光栄に存じます。これは私だけなのかもしれませんが、アマチュアとして作品を書く上で最も厄介だったのは、モチベーションの維持でした。日常での波風を『書く』という非日常に持ち込まない事に、とても苦労しました。
ただそれでもこの作品の完成を諦めなかったのは、ひとえに可愛い可愛いキャラクター達を、自身の未熟さ故日の目を見ずに死なせてしまう事が、何よりも辛かったからなのです。
なので今後もこのちょっと気持ち悪い初心を忘れず、他でもないキャラのために精進していこうと思います。
【あらすじ】
一見普通の高校生・十河春一はとある冬の夜、培ってきた常識が唐突に破壊される事となる。
彼が出会ったのは二人の少女。この世界に住まう妖怪を保護・管理する組織『休更月』の剣士・大河小百合。
そして人間とは思えない身体能力を持つ、街を賑わす連続傷害事件の犯人・栗毛少女。
春一はそんな二人の壮絶な死闘に恐れ戦きながらも、とっさに小百合を助けてしまった事で、日常の片隅に存在する非日常へと誘われる。 だが春一は一貫して小百合を避けようとする。それは彼女が近づく事により、かつて経験した凄惨な過去、
そしてその中で生まれた人の心を色彩として把握してしまう忌まわしき能力に、再び直面させられてしまうからであった。
しかしそれでも小百合は、春一へ手を差し伸べようとした。春一はそんな彼女の優しさに触れ、ついにはその傷を晒す事を決意する。
そして小百合も、春一だけでなくその妹・羽音、親友のサク、幼馴染みで教師の詩衣との出会いにより、今まで意識さえしなかった己の孤独な在り方に、やんわりと疑問を持ち始める。
こうして二人は不器用ながら、自らのあるべき姿を模索する。
そんな中、冷たい目をした謎の存在・栗毛少女が、再び二人の前に現れる——。

カオスガーデン 〜プロジェクト ブライダル〜

延野 正行(のべの・まさゆき)(33歳)
【著者プロフィール】
1980年7月25日生まれ。大阪府出身、在住。
【受賞コメント】
受賞のお電話を頂いた時、「ありがとうございます」と携帯越しに頭を垂れるというベタな事をやってしまうほど感動し、電話を置いた時に「第1回のスーパーダッシュ新人小説賞に投稿したことがあるオッサンが受賞していいものか」という懐疑的な気分になり、コーヒーを飲みながら「でも、たくさんの読者に読んでもらいてぇなあ」とささやかな願望を口にしました。
特別賞という形で評価していただいた審査員の方々、また編集や下読みの方、そして今まで応援してくれた友人、恩師、家族、僚友に感謝を述べたい。
今は言葉だけですが、いずれ「面白い」と手を叩いて喜んでいただける作品で返礼させていただきたいと思います。
【あらすじ】
受若干11歳でテロリストが占拠する飛行機を1人で操作し、生き延びた経験がある磯風奇跡は、朝庭学園の高等科へ招聘される。そこは凶悪な犯罪者の重要情報を握った少年少女の特別保護施設だった。
その中で、磯風は天才科学者にして考古学者、自他ともに認める美少女潮乃女子猫と邂逅する。彼女が発掘・命名した古代のスーパーコンピューター『パンドラ』。すべての事象を正確な確率によって予言できるパンドラは「二〇二〇年三月十八日に、テロリストによって朝庭学園へ核ミサイルが落とされる」と推測していた。
驚愕の予想に一息吐く暇もなく、発表された回避方法に、磯風は震撼する。
それは学園の卒業前に、磯風奇跡と潮乃女子猫が結婚することだった。
見ず知らずの二人は学園のため、お互いが好きになる努力を始めるが、朝庭学園の生徒や教師は曲者ぞろい。とんがり帽子にマント姿の魔法少女の生徒会長岳東リニア。案内に命をかける土越案内。ランボー教師海島国男。上から目線のAI「エピメテウス」。さらに異世界からきたフルフェイスヘルメットの少女に巨大二足歩行ロボット、暗躍するスパイ、そして子猫を狙う謎のテロリストたち。
次第に状況がカオス化していく中、磯風は叫ぶ。
「この変態共め!」
果たして、奇跡と子猫は結婚できるのか!?

最近のライトノベル業界、こんな枠組みの作品が多いかもしれません。
●主人公は男で特別な能力/才能を持つ、もしくは武道の達人
●日常シーンはほぼヒロイン同席でコメディタッチ
●バトルあり、作品の山場はもちろんバトル
あと、これは選択オプションで、
●主人公やヒロインに悲劇的な過去とトラウマあり
……今回の最終選考作品は全て、この枠を使用しております(苦笑)。
いえ、『こういうのがウケてるし僕も書こう』『私も好きだから書いちゃおう』はOKなのです。われわれにとって小説書きはお仕事。流行りのコスチュームを着こなすのもスキルのひとつ。実際、これはエンターテイメントの様式としては大定番のひとつですし、僕もこういうのを書いています。でも、ここで質問。
「本当にその服、あなたに似合うと思いますか?」
それを着ることで個性が引き立つかどうか。そこが大切なのです。

暁のバトロジカ
バトロジカの設定を軸にして物語を書こうとする。その意欲は見えましたが、全体的に練り込みが足りない印象です。
バトロジカである主人公をもっとおもしろく描いて欲しかった。
カオスガーデン〜プロジェクト ブライダル〜
いいところ「アイデアがよい」「勢いがある」。 悪いところ「せっかくのアイデアを料理しきれてない部分が多い」「勢いで押し切れるほどの勢いはない」。
しかし、定番のフレームを踏襲しながらも"よくあるネタ"に陥らないセンスの芽が感じられます。作者はこれから自分に足りない部分をどう埋めていくのか。それが鍵になるのではないでしょうか。
現し彩なす
伝奇アクションな妖怪退治もの。でも、伝奇部分とアクション部分が……うーん。
その代わり、主人公と妹の掛け合いはよく書けています。出番が少ないのに妹のキャラは印象的でかわいい。
となると、作者にこう訴えるべきかもしれません。
「あなた、バトルものよりラブコメを書くべきですよ!」
プロへの道が開けた今、ふたつ選択肢があります。ラブコメマスターめざしてストイックに突き進むか。もしくはオールラウンダーになるべく足りない部分を徹底的に磨いて、ラブコメ以外も書けるようになるか。作者の選択に注目ですね。
アプリコット・レッド
かなり技術力が高いです。キャラもコメディも書けている、芸術都市の設定も個性的、ストーリーもバトル描写もこなれている。ただ疑問がひとつ。
「この作品、バトル要素ってむしろ要らないのでは?」
また、山場をバトル描写に割いた影響もあってか、作中で最大のイベントとすべき芸術に関する重要問題がひどくあっさり解決……。実に惜しいです。"まあまあ"くらいのバトルよりも、こちらにどう収拾つけるかが読みたかった。もしくはバトル要素のアイデアをさらに煮つめて、物語の中核に据えるか。
土台となる技術力があるので、もっとチャレンジできるはずだと思います。
本当のライバルは投稿作品ではなく、月に何十冊と刊行されていくプロ作家の作品です。そこで埋没しないためにも、作品の個性を突きつめて欲しいですね。
ファーレンハイト9999
荒唐無稽な物語をしっかり書き切っています。
粗い部分はありますが許容範囲内。むしろ粗さが勢いを生んでいる面もあり、
「バカバカしくも丹念に書きこまれた世界観の前に『細かいことはどうでもいいや! もっとやれ!』と思わされてしまう」
そういう作品です。
流行りの枠組みを踏襲しているのは業界のトレンドではなく、エンターテイメントとしての満足度を求めた結果でしょうか。世界観が面白すぎて「これ売れる?」と訊かれても「わかりません!」としか答えられないほどですし(笑)。それくらい個性的でバカバカしくて、魅力的です。あまり流行とか気にしてない……よね?
この調子でじゃんじゃん書きまくって欲しいと思います。面白いです。
ファーレンハイト9999
オタクが法律で規制させた世界という設定をうまく生かしているあたりがまず掴みとしてしてよかったですし、何より勢いがあるところが非常に好感を持ちました。照れずに「面白い」と思うものを前面に押し出していく勇気が感じられます。お話を構成するパーツパーツに「楽しませよう」という意図を盛り込めているのは素晴らしいと思いました。
主人公、ヒロイン共に見せ場がしっかりしているので、飽きずに最後まで引き込まれましたが、個人的には、後半のコミックマーケットが舞台になっているあたりはもう少し取材すると面白いネタが一杯あると思いました。
アプリコット・レッド
表現力は高く、描写の繊細さは特筆に値します。創作への姿勢そのものが「力」として発現している世界観は複雑で、よく書けていると感じました。反面、難解なところも多く、何度か戻って読み返さないと理解しにくい点は善し悪しかも知れません。キャラクターの掘り下げがもう少しうまくいくと更に面白くなったような気がします。
現し彩なす
心地よい中二感とスピーディなー展開、そして春一、小百合の主人公カップルが魅力的に書けている点が高評価でした。構成的には日常パートの面白さにバトル部分がついて行けていないところが見受けられて惜しい感じもありましたが、全体として完成度が高く一気に読むことが出来ました。後半にもう一つ盛り上がりがあれば更に高得点だったかも知れません。将来性を感じさせる作品でした。
カオスガーデン 〜プロジェクト ブライダル〜
小説技術としては荒い印象ではあるのですが、とにかくテンションが高い。次々と思いついた事を投入して強引にお話を進めていくような印象といいますか、乱暴さが心地よい感じでした。それにとにかく徹頭徹尾ヒロインの潮乃女が可愛いと書き続ける主人公(と作者?)の一途さが物語を結末に向けて読み進めさせる原動力になっているのがよかった。押しかけヒロイン系としてはかなり高水準だと思います。もう少し書きたい事を整理出来ると、一気に化けそうな逸材だと思いました。
暁のバトロジカ
冒頭からなかなか盛り上がる展開で、全体にオーソドックスな構成でよく書けた作品でした。ただ肝心の「戦闘論者」の設定が生かされていないのが残念でした。「説得されたら負け」というルール自体は面白かったのですが、登場する戦闘論者全員が前提となるルールを破っているというのは演出として惜しいと言わざるを得ません。作中人物も読者も説得しなければならないのですから、もっと練り込んでいれば更に高得点だったと思います。頑張ってください。

今回は難しい選考になりました。最終選考に残った五作ともそれぞれ違った魅力と個性があり、甲乙をつけるのに苦労しました。以下簡単に選評を書かせていただきます。

暁のバトロジカ
『戦闘論者』というアイデアは素晴らしいと思います。クライマックスの裁判の場面も緊迫感がありました。ですが『戦闘論者』には何ができて何ができないのか、魔法使いとはどんな存在なのか、など設定にあいまいな点が多く、読んでいて違和感を覚える部分がありました。
アプリコット・レッド
文章に独特のリズム感があり、言葉のセンスを感じます。読んでいてとても心地いい作品です。キャラクターも奇抜ながら、ただの変人ではなく魅力ある人物に仕上がっていました。物語の舞台設定については、その手があったかと正直感服しました。後半の展開が唐突で、少々主人公に都合がよすぎるような気がしました。
現し彩なす
善良で好感の持てる登場人物といい、愛情と優しさにあふれた物語の展開といい、心温まる良い作品だったと思います。ヒロインだけではなくサブキャラクターもしっかりと描写されており、作品に対する細かな気配りがうかがえます。反面敵となるキャラクターが魅力に欠け、バトルの描写が今一つ物足りないと感じました。
カオスガーデン 〜プロジェクトブライダル〜
カオスの名の通り、実に混沌とした物語です。次から次へと予想もしていなかった急展開が待っていて、読む手が止まらなかった作品です。冒頭のシーンも素晴らしく、一気に物語に引き込まれました。ただ悪役の描写があまりにもなおざりではないでしょうか。せめて名前ぐらいは付けてあげるべきだと思います。
ファーレンハイト9999
プロットに無駄がなく、伏線の張り方も秀逸。とても完成度の高いスパイアクションだと思います。主人公の戦う姿にも胸が熱くなりました。登場人物は主役脇役含めて、読み進めれば読み進めるほど魅力が増し、後半は夢中になってページをめくりました。世界設定には若干無理がありますが、それを感じさせない勢いと魅力のある作品でした。

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