第3回集英社ライトノベル新人賞ゲスト審査員講評

稲垣理一郎

 どの作品もみな、「どうだこの世界、面白いだろ!?」っていう、作者のあっつい想いが垣間見えました。これはとても大事なことです。一読者として、楽しませていただきました! そのあっつい想いを少しだけ、「どうだこのキャラ、面白いだろ!?」に転換できた時、さらに一次元グレードアップするんだと思います。

混沌都市の泥棒屋
サーシャがとても良い!今回一番のキャラでした。
良くも悪くも大仰な文章が、まんま人物像になっており、おおいにプラスに働いています。
それだけに、ヒロイン陣のキャラかぶりが気になります。全員ある種母親的。
主人公の欠落を埋める物語なのに、周りはみんなすでに許していて。
どうしても主人公が内向きの、うじうじした話になっちゃう。
キャラ全体の配置を意識すると、もっと楽しく読める気がします。
部長、服を透視したいので、ご承認の程よろしくお願い致します
神様&会社。神社同士の競争。
その設定が面白いので、もっとピックアップしてほしい!
男の下着が見えちゃうくだりとか、素で笑いました。
主人公と天使の二人で、そういう軽いノリで進めるのかと思ったら、次々と学友が登場。
分量の割に多すぎて、印象が薄いです。『変わったフェチ』だけではキャラにはなりません。
もう少し、焦点を絞ったほうがいいのかも。
閉鎖型エデンのノオト
不気味にメカニカルな、世界描写がすばらしいです。
狭~い世界から、段階的に広がる冒険がスピーディー。
映画『キューブ』のような、探索のすごい緊張感!
マシンの敵ってどうなの?って思ったけど、『ファランクス』とかかなり熱くて。
敵は怖く、ヒロイン達は可愛い。設定が煩雑すぎるのだけが難点。
問題を設定の後出しで解決するのではなく、キャラで解決してほしいです。
棘の忠臣
序盤、余計な登場人物がおらず、ちゃんとキャラが話を動かしています。
世界に入りやすく、そして面白い。審査を忘れて引き込まれてしまいました。
戦闘描写も熱い!オンデルとの試合とか、とても格好いいです。
ただキャラ描写は、もっと大事にしてほしい。
過去を語ることがキャラ立てではありません。
主人公の欠落は社会からの疎外なので、中盤で認められた時点でゴールが消えてしまいます。

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