『エコー・ザ・クラスタ』森月真冬

編集長コメント

地球人が宇宙に進出している未来。ツキムラクモ国の少年兵アカネは、作戦中に遭難し、敵国の少女兵リリスと出会う。ふたりは帰還するため、三十日ほどの時間をふたりきりで過ごすことになるが…。話の大半を占める、主人公の少年少女の密室劇にどんどん引き込まれていきます。敵と味方として出会ったふたりは、年も近く、共通の番組をみていた経験もあり、少しずつ心を通わせていきます。途中、アカネが無事に帰還できるかわからなくなるのですが、そのあと二人の距離が急速に縮まっていくところは、読んでいて胸が熱くなりました。
意外なオチもスタッフの間で好評。キャラクターの魅力だけでなく、ストーリーに力のある作品でした。

担当編集コメント

まさしく清く正しい、ラブコメディ作品。二人の漂流生活はとても楽しく読めました。
宇宙、ロボット、戦争というハードな題材を使って、どうラブコメというものを成立させるのかと読みながら考えていましたが、読み終えると見事全てがいい具合にミックスされて、非常に完成度の高い作品でした。
特に主人公とヒロインの「対立→お互いに唯一無二の存在になる」という変化は非常に良く書けていました。
ただ、ロボットや戦闘シーンの描写などはまだ、甘い部分が目立っていました。作者の頭の中にあるイメージを文章にしきれていないのではないかと感じます。
主人公とヒロインの感情や心の動きがうまく書けている分、もったいないなと思います。
その反面、この部分をうまく書けるようになれば、応募原稿もより良くなるし、今後の幅が広がるのではないかと思いました。

編集部コメント

  • 最後のオチのつけ方が非常に印象に残った。予想できそうでできないところが良い。
  • 絶望的な状態の中の二人を応援したくなるように丁寧に掘り下げていたのも好印象。ただSFの読みづらさ・あるいはSFに慣れない読者に対して描写などでどうカバーするかが今後の課題。
  • 終わり方など細かい点は気にはなるものの、たった二人のキャラクターのやりとりでここまで描ききっていたのは実力を感じさせる。
  • キャラが必要以上に幼く見えるところと、終わり方は不満。言葉の選び方が独特なので、好き嫌いが分かれる印象。
  • 全てをあのオチに繋げるアイデアはいい。が、漂流前の二人が憎み合う様子や、漂流中の絶望的な状況での二人のリアクションにイマイチ緊張感がないので、せっかくの最後の種明かしのインパクトがちょっと弱いのが惜しい。

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