『武人外剣虎』河鍋鹿島

編集長コメント

魔剣をめぐる和風バトルファンタジーとも言える本作は、候補作の中でもっとも個性的で、異彩を放っていました。「自分が面白いと思うものを世に出そう」という作者の強い決意が感じられます。バックグランドまで構築されたキャラクター設定、最強の主人公を描こうとする戦闘描写など、読者を喜ばせようとするサービス精神にも好感が持てました。
ただ、個性が強烈であるあまり、現在のライトノベル読者に受け入れられるかという点が気になります。
和風の固有名詞が多いことで、かえって感情移入がしづらくなっているような気もしました。
しかし間違いなく、本作は今回の候補作の中でいちばんの意欲作です。
作者の河鍋さんは、ラノベ界に革命を起こすような作品を書ける可能性を秘めた方だと思います。
今後に期待しています。

担当編集コメント

昨今のライトノベルの流行をものともしない時代劇風ファンタジーで勝負をかけた異色作。時代劇とファンタジー要素を織り交ぜた独特な用語と、王道を全て外した展開、一癖も二癖もあるキャラクターたちが相まって非常に強い個性を放っていました。しかし、それゆえ、その個性を活かせた物語になっているのか? と選考する側の目は厳しくなったと思います。
この物語の主人公は湧き出る怒りから、強者と刀を交すことだけを生きがいとしているカリスマ的存在。
しかし彼がそこに至るまでのバックグラウンドは薄く、読者がキャラクターを支持するところまで描ききれていないことが非常に勿体ないと感じました。
またストーリーの筋は通っていますが、この個性的な世界と人物を活かすだけのドラマを作れていません。端的に言えば強者が強者を倒すだけの物語。
そこに読者が語りたくなるような予想を裏切る展開や心を揺さぶられるシーンが入っていればさらに高い評価を得られたと思います。とはいえ、作者の「これが書きたい」という熱量がダイレクトに伝わり、今回の選考で一番記憶に残る作品となりました。

編集部コメント

  • 仇討ちや魔剣探し、強くありたいと願う武士の物語であり、ライトノベルとしてはあまりない攻め方をしていました。登場人物の全てにちゃんと背景があり、それがしっかり描こうとした姿勢が良かったです。
  • 作者個人が書きたいこと、意思は強く感じるが、読者の求めるライトノベルとかけ離れているように思う。アクションの分量に比べてキャラクター同士のエピソードが少ないので、もっと加えて欲しい。
  • どのように物語が展開されるのかも期待したが、エンタメ的に向かうべき方向に進んでいなかった。読者を意識した展開作りやキャラクター配置にして欲しいと思います。
  • 最強の男を描いているという点では、流行の俺TUEEEに通ずる部分があるので評価できる。ただ、いまのラノベに求められるロマンが足りない。
  • ライトノベルという媒体で新しいものを作ろうとする想いは好印象でした。設定をよりシンプルにし、王道のストーリーにおいて、いかに主人公を魅せるかを追求してほしいです。

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