個人情報保護方針
ご意見・ご感想
HOME
>
リレーエッセイ
>
第61回 小説なんて大嫌いだった小学生の頃の僕は... 藍上 陸
リレーエッセイ
第61回 藍上陸
第60回 土橋真二郎
第59回 アサウラ
第58回 内山靖二郎
第57回 比嘉智康
第56回 三浦勇雄
第55回 長野聖樹
第54回 川口士
第53回 瀬尾つかさ
第52回 葵せきな
第51回 水城正太郎
第50回 師走トオル
第49回 新井輝
第48回 あすか正太
第47回 長谷敏司
第46回 元長柾木
第45回 荒川工
第44回 大槻涼樹
第43回 鋼屋ジン
第42回 海法紀光
第41回 小太刀右京
第40回 三田誠
第39回 水野良
第38回 あかほりさとる
第37回 鏡貴也
第36回 築地俊彦
第35回 三雲岳斗
第34回 古橋秀之
第33回 中里融司
第32回 五代ゆう
第31回 浅井ラボ
第30回 高瀬彼方
第29回 榊一郎
第28回 神野オキナ
第27回 早見裕司
第26回 太田忠司
第25回 矢崎存美
第24回 田中哲弥
第23回 北野勇作
第22回 田中啓文
第21回 牧野修
第20回 倉阪鬼一郎
第19回 飯野文彦
第18回 菊地秀行
第17回 今野敏
第16回 押井守
第15回 深見真
第14回 山下卓
第13回 乙一
第12回 松原真琴
第11回 天羽沙夜
第10回 映島巡
第9回 定金伸治
第8回 城崎火也
第7回 霜越かほる
第6回 図子慧
第5回 荻野目悠樹
第4回 一条理希
第3回 嬉野秋彦
第2回 ゆうきりん
第1回 神代 明
この世で嫌いなものを挙げろと言われれば小説と勉強と答えていた。義務教育の頃の話である。漫画の敵だと思っていたからだ。セットにしていることからもわかる通りその時代の私にとって小説と勉強は同じ類だった。あんなもの好きこのんで読んでいるやつはどうかしてるんじゃないか、大人にいいように操られているのだと考え唾棄した。娯楽とはすなわち漫画でありそれ以外は認めていなかったのだ。子供時代の純粋な気持ちには嘘をつけないから正直に書く。ちなみにどうしてこんなエラそうな文体なのかというと私の知っているコラムニストやエッセイストは大抵エラそうに書いているから、エラくなくとも試しにそれを真似しているのである。若干尻の据わりが悪く、むず痒い。それで思いだしたが小学生の頃の私はよく放屁などをして暴れていた。たとえば給食に出た大学芋が、五時限目あたりになって胃腸の中で具合良く膨らみ、催してきたとする。私は授業中でも関係なしに突と席を立って遠慮なく鳴らすのが常だった。そして「ラッパだ、どこかでラッパが鳴ったぞ」と大声で叫ぶのだ。後ろの席のA君も心得たもので臭いに顔をしかめながらも「ラッパの口を塞ぐぞ」と負けずに叫びながら両の手を合わせてピストルにし私の肛門に浣腸をしてくるのである。そんな阿呆で小説嫌いな私が十年後に小説家になるなど当時だれが予想し得ただろう。しかし初めて小説らしきものを書いたのは実はその小学生時代のことなのである。六年生のときに国語の授業で物語を書けという課題が出た。私は書いた。それがクラス代表に選ばれ、先生の手によってクラスメイトの前で朗読されてしまったのだ。原稿用紙にして四枚程度の短いものだ。二人の少年と麦わら帽子が出てくる話だった。少年のうちの一人は当時見ていたドラマの影響で『千石』と名付けた。なにやら麦わら帽子を使ってタイムスリップをしていた気がする。それ以外の内容はあまり覚えていない。教師に朗読されている間中、私は恥ずかしくて防災訓練のように机の下に丸まって耳を塞いで震えていた。しかし同時にほのかに自尊心がくすぐられてもいた。小説なら書けるのだと知った。教室にあった国語辞典を休み時間などにめくって『ちんちんかもかも』などの単語を調べて一人喜んでいたのが功を奏したのかもしれない。思えば不憫な子だった。どうオチをつけたらいいかわからないのでこれで擱筆することにするが、最後に来月のエッセイをお願いする方を紹介する。「紳士なのは17時までだ」という言葉がもっともよく似合う、電撃文庫の夏海公司さん、よろしくお願いします。
藍上 陸(らんじょう りく)
1985年群馬生まれ群馬育ち。
『Beurre・Noisette』で第五回スーパーダッシュ小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。
現在、『アキカン!』シリーズを刊行中。
近ごろは群馬を飛び出し日暮里周辺によく出没する。
(c) SHUEISHA Inc. All rights reserved. 無断転載禁止
(C)袴田めら/集英社
HOME
|
新刊情報
|
来月以降の発刊予定
|
ライブラリ
|
特集
|
作家・イラストレーターインタビュー
|
リレーエッセイ
|
編集部から
|
スーパーダッシュ小説新人賞
|
メルマガ
©SHUEISHA Inc. All rights reserved. 無断転載禁止 ©集英社