全員の名を聞き、紋章を見て、ロロニアはようやく状況を理解した。
「ど、どうして七人いるんですか?」
 フレミーが呆れた声で言う。
「説明しないとわからない?」
「………ごめんなさい」
「この中の誰か一人が偽物なのよ。それはきっと、あなただろうと私は思っている」
 フレミーから殺気が放たれた。ロロニアは小動物のような悲鳴を上げて後ずさる。アドレットは二人の間に割って入った。
「待て、フレミー。まだ決まったわけじゃない」
「決まってはいないわ。だけどそうとしか考えられない。その娘が七人目じゃないとしたら、あなたは誰だというの?」
 アドレットは言葉に詰まる。ロロニアをかばいながら、ナッシェタニアとの戦いのことを思い出す。
 フレミーはあり得ない。彼女がいなければアドレットは死んでいる。ハンスとチャモも同様だ。結果的にナッシェタニアを追い詰めたのは彼女だからだ。
 モーラはアドレットを殺すよう仲間たちを煽動していた。しかし彼女も、ナッシェタニアに騙されていたとしか考えられない。ゴルドフはナッシェタニアの配下だ。怪しいと言えば怪しいが、状況を見る限り彼もやはり騙されていたとしか思えない。
 そもそもナッシェタニアが他の誰かと手を組んでいたとすれば、他にやり方があったはずだ。少なくとも六花の勇者を一人も殺せないというへまはしていないだろう。
「他にいないわ、七人目は」
 フレミーが断言する。ハンスとチャモも同じ意見のようだ。ロロニアに疑いの目を向けている。
「待て。一つおかしいぞ。ロロニアが七人目だとしたら、なぜナッシェタニアと一緒に来なかった。ナッシェタニアを孤立させる意味はどこにある」
「ナッシェタニア………姫様に何かあったんですか?」
 ロロニアが尋ねてくる。あいにく説明している暇はない。
周囲に敵の気配はない。どうやら本当に、戦いはこれで終わったようだ。モーラは荒い息を吐きながら、テグネウが立ち去った方向を見つめていた。
「ふざけたやつじゃったな。あんなものが、凶魔の統率者か」
「いつも通りよ。吐き気がするほど」
 そう言ってフレミーが、今度はモーラに銃を向けた。モーラはさほど驚かなかった。フレミーが敵だとも思わなかった。敵ならば、テグネウがいるうちに攻撃を仕掛けていたはずだ。

「何をするフレミー」
「モーラ、一つ聞きたいことがあるわ」
 その目に込められているのは、殺意ではなく疑念だ。フレミーはモーラが七人目ではないかと疑っている。
「テグネウと何かがあったの?」
「………なぜそう思う」
「時間がない、そう言われた時のあなたの様子が不自然だった」
 どく、とモーラの胸が高鳴った。モーラは必死に冷静を装った。そして根も葉もない疑惑を向けられ、困惑するような表情を作った。
「不自然、か。そのような理由で銃を向けられては、命がいくつあっても足りぬわ」
「はぐらかさないで。きちんと答えて」
「何もない。こういえば満足か?」
 モーラはフレミーに近づき、銃口を下げさせる。
「フレミーよ。七人目の正体を見破ろうとするのは良い。だがあまり殺気をばら撒くな」
 何も答えず、モーラの目を見据えるフレミー。
「逆にお前が疑われるぞ。七人目を探すふりをして、本当は仲間を殺す機会を狙っていると。七人目はフレミーだ。言いがかりをつけてわたしを殺そうとした。わたしが仲間たちにそう主張したらどうするつもりじゃ?」
「………わかったわ」