ダッシュエックス文庫
モンスター娘のお医者さん
  • 1~4巻大好評発売中!
  • モンスター娘のお医者さん
  • モンスター娘のお医者さん2
  • モンスター娘のお医者さん3
  • モンスター娘のお医者さん4

INTRODUCTION

医師グレンは魔族と人間が共存する街「リンド・ヴルム」で助手であるラミア族のサーフェとともに診療所を営んでいる。
モンスター娘たちから連日さまざまな診察依頼が舞いこみ、その評判は上々だ。
あるときは闘技場のケンタウロスの不調を見抜いて求婚されたり、またあるときはマーメイドのエラに手を突っ込んで触診したり、フレッシュゴーレムの体のキワドイ部分を縫合したり…。
グレンとしてはただただ真剣に治療にあたっているだけである。そんな日常の中に、突如としてハーピーの卵を狙う賊が現れて…?
モンスター娘をこの上なく愛する小説家と絵師が満を持して放つ“モン娘”診察奮闘記!!

CHARACTER

いろんな“モン娘”大集合!

COMIC

COMICリュウWEB(徳間書店)にてコミカライズ連載スタート!漫画家は業界の実力者・鉄巻とーます!!

COMIC

RECOMMENDATION

業界のレジェンド達も絶賛!

オカヤド先生(『モンスター娘のいる日常』)
モン娘の生態を真面目に考察した結果、キワドイ描写になっただけの、到って真面目な作品です! でも僕はモン娘の女医かナースさんに注射されたいかなって。

健康クロス先生(『魔物娘図鑑』)
種族の生態や文化が感じられる所も素敵な作品ですが、やっぱり愛情深く嫉妬深い人ならざる身体のヒロイン達が最高です!

鮭夫先生(『ヒトミ先生の保健室』)
待望の!単眼(サイクロプス)娘の登場!! やったー!!!(※診察の為)恥ずかしい目に遭うモン娘達に目尻が下がりながら、彼女達の胸に秘めた想いに目頭は熱くなります。

BONUS SS

コミカライズ始動記念SS(ショートストーリー)を折口先生がノリノリで書きおろし!

「と、と、届けにきたわよ……最新刊の『リンド・ヴルム探訪』の三巻。ほ、ほら!」
「うん、ありがとうメメ」
「ひいっ」
 グレン・リトバイトは、実は読書家だ。
 人間ではない異種族――魔族の専門医であるグレン。
日々その医療技術の向上を目的として、数多の医学書はもちろん、生物学、博物学、植物学に関連する本を読み漁っている。果ては小粋な冒険小説から、エッチング画の連作を基にした物語絵まで、グレンの読書の幅は広い。
 一つ目の少女メメもまた、グレンほどではないが読書好きだ。
 今日は彼女から絵物語シリーズ『リンド・ヴルム探訪』を貸してもらう約束だった。わざわざ診療所に足を運んでもらっている。
「でも、メメもすごいね。銅板を削るのは結構大変だろう?」
「し、し、死ぬかと思ったわ! 絵師さんの元絵には、イリィもルララも描かれてるのよ! 私が銅板削るの失敗したら全部台無し……緊張で三日間眠れなかったわ! どうしてくれるのよ!」
「安眠効果のあるハーブでも処方するよ」
「ひいい! 私を寝坊させて遅刻させて親方に大目玉食らわせる気ね! なんて恐ろしい……!」
 メメの一つ目には、すでにこの世の終わりのような表情が浮かんでいる。
 割といつものことなので、グレンは放っておく。それよりも楽しみにしていた『リンド・ヴルム探訪』のほうが気になった。
 この本は、グレンの住む街、リンド・ヴルムを舞台にした連作版画だ。
 第一巻『空中飛翔』では、ハーピーのイリィが。『水中遊泳』ではマーメイドのルララが、それぞれ主役のモデルとして抜擢されたと聞いている。どちらもグレンが診察したことのある少女たちだ。
主人公の少女たちは、リンド・ヴルムの街並みを空から、あるいは水路から眺めて、独特の風景に心を奪われていく――そんな物語。
 派手な冒険活劇などではないが、街の描写が実に精緻、正確であって評価も高い。そのあまりの描写力の高さゆえ、旅行者には観光案内代わりに使われているとか。
 工房のサイクロプス、メメはなんと、この版画づくりに一役買っている。作者は別の人物であるが、作者の下絵をもとに銅板を削り、版画に仕上げているのだ。手先の器用なサイクロプスならではである。
 読書家のグレンも、この物語の新作を楽しみにしていた。
 三巻のタイトルは『名医奔走』。
 中央病院や、リトバイト診療所も作者の取材を受けた。グレンも、自分の診療所がどのように描かれているのか、興味津々でページをめくっていく。
「……なんか、主人公、僕に似てない?」
「に、に、似てるですってぇ? なに言っているの、先生そのものよ」
「いや、でもその割には、町中駆けずりまわったり、女性の魔族ばかり診察してるような――」
「い、いつものことじゃない…?」
「ラミアやケンタウロスやアラクネのヒロインを口説いて――」
「だ、だから……いつものことじゃない……?」
「………………」
 半ばほどまで読んで、グレンは悩む。
 この版画物語の続きを、果たして読んでいいものだろうか。主人公の若医者は、助手のラミアと結婚の約束をしたが、そこでなんとその娘が大病を患っていることがわかる。続きはどうなるのか。
是非とも読みたい。
 だが、自分が街でどんな扱いをされているのか知るのが怖い。
「ありがとうメメ。返すよ」
「え、え、えええっ。まだ読んでないじゃない……」
「いや、なんか、読む気が……」
「わ、私は別に、いいけどぉ……」
 メメが受け取ろうとした本だが、それにしゅるるるると巻き付くものがあった。
 白い鱗の尻尾。
 グレンの助手にして、優秀な薬師サーフェンティットだった。相変わらず、両手よりも尻尾で何かすることの方が多い。
「では私が借ります。よろしいですね」
「さ、サーフェ?」
「三巻はグレン先生がモデルだと聞いていたので、以前から興味があったんです。あら、一枚目から素敵な版画。メメさん、いいかしら?」
 メメはこくこくと頷く。
 サーフェから湧きだす逆らい難いオーラは、あっさりと気弱なメメを呑みこんでしまう。
「ふふふ、まあすごい。このページなんて先生そっくり。あら、でもヒロインは私じゃないんですね……?」
「サーフェ、あの、創作だからね?」
「ええ、わかっていますとも。創作ですから、グレン先生が女性患者に触れたり、患者を口説いたりしていないことは重々わかっています……ええ」
 サーフェの顔が怖い。
 あの版画集を、どういう理由で読むのか――聞きたくとも聞けないグレンだ。
「では、私は部屋で本を読んでいます。ふふ」
「ご、ごゆっくりぃ……」
 薬師のラミアは本を大事に抱え、するすると階上へ登って行った。サーフェの姿が消えることで、メメは胸に溜めていた息をはあっと吐き出した。
「お茶でもいれようか、メメ?」
「ひ、人様の家でお茶なんて恐ろしいことしないわ……! と、とりあえず今日は帰るから、また読みたい本があったら言ってちょうだいっ!」
「わ、わかったよ。夕方だから気を付けてね」
 メメはそそくさと逃げるように診療所を出ていく。顔をあげない彼女が人とぶつからないことを祈るばかりだ。
「読む本がなくなってしまった……」
 やはり『リンド・ヴルム探訪』を読んでみるか。サーフェが読み終わるのもそう時間はかからないだろう。
 自分が、絵物語として描かれていたらどんな気分であるか。
 読んでみたいような、そうでないような――複雑な感情になるグレンなのだった。

 なお。
 続刊である、『リンド・ヴルム探訪4巻 工房技師』においてはメメが主役のモデルにされ、そのことを知ったメメが卒倒してしまうことになるのだが、それはまた別のお話である。