◆TVアニメ完結! 悠木さんの描いたフレミーとは…!?

――アフレコを終えての感想をお聞かせ下さい。

『六花の勇者』は登場人物全員が疑いあって推理をしていく作品ですが、その一方でファンタジー要素もアクション要素もある、私にとっては初めての世界観でした。そんな世界でお芝居するにあたり、まずはシーンの切り替えが重要だと考えました。アクションのテンポ、推理シーンのテンポ…など、いくつもの独特なお芝居のテンポがあるんです。ギャグっぽい場面だとフレミーはアドレットの言葉を受けて、一旦間を置いてから応えたりとか。さらに台詞の文字数が多いうえ、その中で必要な情報をどれだけ立てるべきか…とか。一つの作品なのに、たくさんの切り替えに挑んだアフレコでした。

――担当キャラクター・フレミーの印象をお聞かせ下さい。

オーディションで演じたフレミーの台本は、かなり強い言葉で「ツン」が出ていて「この子、強くし過ぎちゃいけないのかな」というのが第一印象です。パッと見はアクションで動く子ですが、守ってあげたくなる儚さを見せられたら、より魅力的だと感じました。あとフレミーの演技は、終盤にかけてグラデーションみたく徐々に変化をつけようとしました。突然アドレットが好きになるのではなく、少しずつニュアンスを出していければ…と思っていたのですが、これがとても難しくて! フレミーの感情は最大値が低く、例えば彼女の「とても楽しい!」は、普通の人の平常と大して変わらないレベルだったりするんです。その小さい振り幅の中で、どれくらい刻みながら変化を見せていくか…。それに少しずつ気持ちを上げていっても、急に「いや、他人を好きになってはいけない」みたいに抑え込んで戻ったりして(笑)。そこがフレミーの繊細な魅力ですが、かなり苦労しました。

――フレミーを演じていて、特に楽しかった部分はどこですか?

リアクションの部分です。静かで口数が少ないキャラですが、意外とリアクションが多いんですよ。アドレットの言葉にいちいち反応したりして。それをどれだけ入れるのか、探りながら演じるのは楽しかったです。あとは作品の特徴でもありますが、「説明台詞をいかに説明でなく演じるか」も役者としてのやりがいポイントです。生い立ちを語る場面では、フレミーの感情を表現しつつも、視聴者のみなさんに「ここは重要だよー!」と、情報を残す必要もあったりして。感情と情報のバランス取りは腕の見せどころです(笑)。

――ところでフレミーのビジュアルを最初に見た時、どんな印象を受けましたか?

原作だと宮城先生の画調もあって全員世界観の雰囲気に溶け込んでいますが、いざアニメのイラストになってみると、全員すごいキャラが立っているデザインでびっくりしました! フレミーなんて視聴者のみなさんに「乳バンド」とか言われて(笑)。…ゴルドフもお揃いですが。あと、ナッシェタニアの方が衣装の布地が多いのに、なぜかフレミーよりセクシーだったり。改めて面白いデザインですよね。

◆フレミー、そして他キャラの注目ポイント!

――アニメ全編で、特に印象に残っている台詞やシーンはありますか?

最終話でフレミーがアドレットに心を開いて言った「嫌いよ」の台詞が印象的です。フレミーの他人に対する感情って、多分「嫌い」か「知らない」しかないんですよね(笑)。そして知ったら全員嫌いになってしまう。だから関わらないようにしているのに、周りに愛着を感じてきてしまって…。それを上手に表現できないんだろうな、と思いました。あとは最終話の終盤で、ハリネズミを眺めているシーンがあります。フレミーは半分凶魔だから動物が怖がらず、寄ってきてしまうのでしょうか? 彼女の一面を表している素敵な絵だと思いました。…ちなみにアニメ放送は、フレミーにとってはラブコメみたいに終わります。アドレットと親しげな新キャラに「誰よ、この女」って(笑)。

――フレミー以外で気になるキャラはいますか?

チャモはマスコットキャラみたいで可愛いですね。中でも面白かったのは、アドレットがシリアスに推理を展開しているのに、チャモに関しては「もともと疑っていない」とあっさりスルーして(笑)。確かにチャモは世界最強で絶対に六花に選ばれるから、その通りなんだけど…。ゴルドフはとにかく可哀想。姫様に告白めいたことをしては拒まれて、台本にすら「羞恥に震えるゴルドフ」とか書かれていたりして(笑)。あんなフラれ方をしたら女性恐怖症になっちゃいますよね? モーラは原作2巻を読んでから大好きになりました。ハンスはストーリー全体を通して頼もし過ぎる。アドレットは個性の強いキャラなのに、観ている側も彼の活躍に陶酔できる不思議な魅力がありますね。ナッシェタニアは裏表があってセクシーで、原作での役割も面白いです。あと匂いの表現も素敵ですよね。「リンゴのような甘い香り」とか。…結局、登場キャラは全員好きです!

――収録で特に印象に残っている出来事があればお聞かせ下さい。

以前、映像特典用に人狼ゲームをプレイしたのですが、すごく面白かったので最終話の収録後にみんなで遊びました。鈴村健一さんがゲームマスターをして、ロロニア役の金元寿子さんも加わって。私は始まるたびになぜか最初に処刑されたり、狼に狙われたりして脱落しちゃうんですよ!「とりあえず潰しておこう」とか思われるのかな(笑)。日笠陽子さんがすごい面白かった! 何の脈絡もなく「私、人狼です」とか言い出して、みんなが推理しているところを引っ掻き回すんです。佐藤利奈さんは人狼とか騎士とか、役職を引くと急に静かになってバレバレだったり(笑)。すごく楽しい現場でした。

――悠木さんはフレミーとしてED第三章「Nameless Heart」を歌われましたが、感想をお聞かせ下さい。

フレミーは静かなキャラだから歌う印象がなくて、最初は難しく感じていました。でも楽曲がしっかりとフレミーの内面を描いていて、これを聴けば彼女がどういう道を歩み、この先どうなりたいのか分かります。カップリング曲「Frozen Flower」も素晴らしいです。のちのドラマCDの内容について描かれた曲なので、そちらと一緒に楽しんで頂けたら、より世界観が広がると思います。

◆原作『六花の勇者』は「初めての推理小説」に!

――原作第1巻の感想をお聞かせ下さい。

最初は資料として読んでいました。フレミーは無表情なキャラでお芝居が単調になりかねないので、原作でどう表現されているか調べていたんですけど…どんどん引き込まれて、最初の目的を忘れて読み進めていました!「絶対、七人目はハンスだ」「いや、やっぱりモーラだ」「まさかナッシェタニアが!?」と、ひたすらびっくりしていました! そして全部読んでからもう一度最初に戻ると、改めて色んな伏線に気づくんですよね。私、推理小説はあまり得意ではないのですが、この作品は難しいところもありつつ、誰もが分かる仕掛けで事件が動き、アクションやキャラの可愛さもあり、すごく読みやすかったです。

――ちなみに悠木さんはなぜ、最初にハンスを疑ったのですか?

彼だけ出生が明かされていないし、暗殺者だし、お金で動くし、あと目が隠れているし(笑)。アニメだとカッコいい黄色の眼が見えていますね。その後に疑ったモーラは、猪突猛進で「何でもいいけど、とりあえずアドレットが悪い!」みたいなとゴリ押しが怪しくて(笑)。でも2巻を読むと、なぜモーラがあんなに強引だったのか分かるんですよね。あとモーラって、間違いを認めて殺されるかも知れない状況で、すごくしょんぼりと謝っているところがめちゃくちゃ可愛い!(笑)。

――2巻以降を読まれてフレミーの印象は変わりましたか?

むしろフレミー本人が、努めて変わらないようにしている印象がありました。「…だからって私はデレたりしない」みたいな(笑)。相変わらずこの子は全力で壁を作っているなぁ、とか。それでもふとした瞬間にデレてしまったりして。2巻、3巻と進むにつれて、アドレット以外にも接するようになり「お友達ができて良かったね」と、娘の成長を喜んでいるような感覚です。あと、1巻の最後に登場したロロニアが活躍して、フレミー的には恋敵が出てきてしまった…。

――『六花の勇者』は、どんな読者にお勧めだと思いますか?

最初に読んだ時「初めての推理小説」にぴったりだと感じました。この作品にもっと早く出会えていたら、私も本を読むことがもっと好きになっていたと思います。推理小説が苦手な方や、あるいはファンタジーが好きな方にお勧めしたいです。きっと読書の幅が広がり、物語を読み解くことが好きになるはず。私も考えながら読むことは得意ではありませんが、「そういえばあのキャラがこんなこと言っていた!」とか、伏線と謎が明かされるテンポが痛快なので、自然と楽しむことができるんですよ。

――それでは最後に、読者へメッセージをお願いします。

私が『六花の勇者』に関わらせて頂いたのはアニメ化からですが、今では全キャラに愛着が湧くくらいファンになっています。これはこの作品特有だと思うのですが、キャラの思考や思惑が描かれ、それを読み進むにつれて彼らの内面を深く知り、どんどんみんなを好きになっていくんです。そしてアニメーションとしては、文章から想像していたものが実際に動き、改めて驚くことが多いはずです。もちろん、綺麗な絵も見どころです! 私たちもこの世界観を描くための一助となるべく、頑張ってお芝居してきました。みなさんに『六花の勇者』を楽しんで頂きたいです。またこの先、フレミーを演じさせて頂ける機会ができたら嬉しいので、ぜひ応援宜しくお願い致します!

――ありがとうございました!