『悪と徳』
ごんべ
『悪と徳』(あく と とく)
ごんべ(29歳)※年齢は応募時点
- 【著者プロフィール】
- 1991年生まれ。
- 【受賞コメント】
- 拙稿を御査読並びに御批評くださった方々へ、お礼申し上げます。読みにくい内容と文体に、さぞ頭を抱えられたことと存じます。
「老人が、道徳的に生きるとはどういことか悩みながら、他人をぶん殴って首を絞めて尋問して、子どもを助ける」という救いようもない話が、斯様な賞を頂戴するとは夢にも思いませんでした。流行、読者層、レーベルのカラー、いずれも無視した、地獄のような話を送りつけました。ダッシュエックス様の懐の広さに、ただただ敬服するばかりです。
今後は一層精進し、より良きものを作れるよう努めてまいります。次の世代に見せても恥ずかしくないような作品を、息を長く、人々へお届けしたく存じます。
未熟者ではございますが 、何卒、御支持と御指導御鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。
ごんべ 百拝
- 【作品あらすじ】
- 「正しく生きるにはどうあればいいのか。優しくあるとは、どういうことなのか」。老人は、答えのでない問いを、問い続けていた――。
工場や炭鉱で、子どもたちの労働力が求められ始めた、近代国家。人種が入り混じり、格差が顕在化する軍事国家エグスレス王国の首都は、不正義と不条理と理不尽に満ちていた。退廃の都の中、全てを失い、人生に疲れた老人は、内務卿の下で汚れ仕事に手を染める暗澹たる日々を送っていた。そんなある日、彼は敵の隠れ家を襲撃し、檻に囚われた双子と出会う。
敵の正体を突き止めるため、老人は記憶を失った双子を一時預かることにする。しかし老人はまだ、双子の正体と、その先に王都を揺るがす、底なしの悪意と狂気があることに気付いていなかった…。
傷付き、大人を信じられなくなった双子。それを追うは、領土をエグスレスに奪われた士族の戦士たちだった。彼らは、人々の狂気を増幅させる双子の力で、復讐を目論む。
襲い来る敵を打ち払い、双子の面倒を見るうちに、いつしか老人は、己の心と生き方に向き合い始める。そうして人生の旅路の果て、肥溜めのような街で、これまで逃げてきた、己の妄執と向き合う。
正義とは、公平とは、善良さとは、寛容さとは、優しくあるとは、一体どういうことか。寛容の限界はどこにあるのか。
老人は、外の敵と、内の狂気と戦いながら、友人や相棒と言葉を交わし、刃を交え、そして人類との共生が根源的に不可能な存在である双子を前に、人生の行く末を決意する。