IP小説部門は「アイデア」を測る賞である。
アイデアを計る賞なのだから、アイデア勝負の作品が、たくさん送られてくるわけだが……。
悲しいかな、アイデアというものが、誤解されてしまっている。
どう誤解されているのか。
それは「アイデア」=「設定」という誤解である。
設定はもちろんアイデアの一要素ではある。しかし、およそ5つぐらいある要素のうちの、たった一つでしかない。
主人公の人格であるとか、話の切り口であるとか、どんな葛藤とドラマがあるのかとか、アイデアとしてもっと重要なものがいくつもあるのだが……。それらはアイデアと見なされていないのか、軽視されがちだ。
アイデアの5要素というもの言語化して明記すると、以下の通りとなる。
・どんなヤツ。
・どんなモチベ。
・どんな世界。
・どんな味方。どんな敵。
・どんな展開。
「設定」は、このうちの「どんな世界」にあたるものだ。
そこ1つだけ頑張ってみても、他の4要素が、空白あるいはありきたりであれば、まるで足りない。「アイデア」があるとみなされない。
また逆に、設定がありきたりであっても、他で差別化を図るなら、それは充分にアイデアたり得る。
アイデアを設定であると勘違いしている者が、アイデア一発勝負の作品をどれだけ送ってきても意味がない。
新奇なアイデア(設定)が降りてきたことに満足せず、他の4要素を充実させることに力を注ぐべきだ。
むしろ、設定はありきたりの縛りにして、残り4要素のみで勝負する! ――ぐらいの気持ちでいたほうが、サボらず、良質な「アイデア」が出てくるだろう。
さて、今回、IP小説部門・第6回の最終選考には2作品があがった。
片方は、いまあげたアイデア(設定)一発勝負の作品。
もう片方は、アイデア(設定)はありきたりだが、他の4要素で勝負しているもの。
結果からいえば、片方は落選、片方は受賞。――となった。
これから応募される方は、「アイデア」というものを、よく考えてみてほしい。
『ボスの餞』 / 氷堂 | |
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勇者を養殖したのちに刈り取ることで、魔界は膨大なエネルギーを得ていた。 |
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『転生したら勇者しか抜けない剣が刺さった岩だった~勇者が来ないのでゴーレムになって自分で探しに行く!~』 / 長多 良 | |
勇者しか抜けない聖剣の刺さった岩がある。その「岩」に転生した主人公。動けず、なにもできず、ただ勇者が聖剣を抜きにきてくれるのを待つだけの日々。 |
(敬称略、順不同)