第1回集英社ライトノベル新人賞ゲスト審査員講評

長谷見沙貴

各作品、個性的な世界観が構築されており、どのような展開が待っているか期待感をもって読むことが出来ました。作品で大切な、読者の『想像』して読む楽しさがあり、今後の作家の『創造』性に多いに期待が持てると思います。

呪術法律家ミカヤ
全体的に読みやすい作品でした。推理をしていくうちに身内の犯罪と重ね合って行き、やがて結末を迎える展開は王道的なもので楽しかったです。残念だった部分はミカヤよりアイスフェルドの方が印象強かった点です。もう少し主人公であるミカヤに強い個性がほしかったです。また、この二人のやり取りもお互いの欠落している感情部分を互いに持っているなど、双方の引き合い部分や共鳴部分を強調できる展開であればさらに面白くなると思います。
アキハバラ・クレイジーナイト
世界観の設定がしっかりと描かれており、作品の中に引き込まれていきました。展開される流れもわかりやすく楽しく読むことが出来ました。バトルもいい感じです。しかし世界観が現実っぽく描かれているのに対し、キャラの言動が現実的にはいなさそうなセリフがあり、リアリティに欠け気になりました。世界観とキャラの統一はもう一考ほしいです。また、キャラセリフのやりとりも場面繋ぎセリフが目立ち、もっとキャラ同士の掛け合いがあるとより深みが出て、さらに作品が向上すると思います。
Sっ気のある美少女ボディガードを雇ってしまったので、いつも敢えて死にそうな目に遭わされたのちに護られる俺。
フェイクをかけながら読ませる展開は楽しめました。構成も上手くできており、キャラの行動にもちゃんと意味があって、作品自体のまとまりがいいです。多少ツッコミを入れたくなる部分もありますが、それを退くほどの作品のパワーを感じました。マイナスに感じたのがパロネタ。わかれば笑えますが、知らない人には何の事かと作品から置き去りになってしまいます。パロネタの数を控えた方がより作品のオリジナリティが強調されると思います。

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