『アニメが見たい機械王』木下史朗

編集長コメント

最終戦争後の地球で、人類遺産の発掘任務に励むアンドロイドが、遺跡からアニメのデータチップを発見するという出だしは魅力的で、心惹かれました。ただ、作中のアニメ(読者にはその内容はわからない)があまりに類型的な美少女アニメである点、キャラクターがアンドロイドであることの必然性などが少し弱い気がしました。全体的には、キャラクターのかけあいもいきいきしていて、たいへん面白く読めました。

担当編集コメント

戦争によって地下に人間たちがコールドスリープされ、その住めなくなった世界と文明をアンドロイドたちが修復していくという物語設定に惹かれました。アニメ作品のデータを掘り起こしたことから、その「アニメが見たい」という欲求に従って次々と明かされていく事実や問題を解決していく感じが勢いもあり良かったです。ただ、その一点突破的な部分もあるので後半は少し勢いが落ちてしまったように感じました。もう少しキャラクターを強く出して会話などを盛り上げつつ魅力を出せばもっと良いものになると思います。

編集部コメント

  • SFジャンルのとっつきにくさを極限まで和らげているところは非常に良かった。「アニメ」という読者との共通項をみつけ、小難しくならないようにする配慮がなされていた。
  • アンドロイドといいつつ、メンタルがほぼ人間なので、あまり設定に意味が感じられなくなってしまっていた。作者独自のアンドロイド感が欲しい。
  • アニメが見たい、という一点突破しか主人公の軸がないので、中盤以降飽きる。サブプロットやサブキャラで補強しつつ、物語の中心軌道を描く術を身に着ければもっとよくなるはず。
  • 作中作をどんなに熱く語られても読者はその作中作は知らないので、キャラクターの感情と読者の感情が乖離してしまう。読ませ方に工夫を。

『幻想の管理人 -盲目の吸血鬼-』景 詠一

編集長コメント

幻想種を守る、幻想管理人であるヒロインと、主人公が出会うことで始まる、どこか切ないストーリー。鬼の幻想種である心音、虚構種の日向などのキャラクターと主人公とヒロインの関係性もかわっていきます。描くキャラクターの魅力は、今回の応募作の中でもいちばん。
それだけに、主人公とヒロインのパートの印象が弱くなってしまったような気がします。

担当編集コメント

主人公がじつは特別な血筋で、その能力が徐々に目覚めていって、協力してくれる人外ヒロインがいて――。まっとうな設定と構成でとても読みやすい作品でした。各キャラクターもよく考えられている部分が多く、特にメインヒロインたるセナさんのキャラは、「年上」「人外」「ショタコン」(?)、しかもド近眼ゆえにいちいち距離が近いという、売りがたくさんあるものでした。
軽快なラブコメかと思いつつ、心音との絡みでは、「好きという気持ちは、食欲なのか恋なのか」という深く堀り込んだテーマにも挑戦していたように思います。
文章もワンセンテンスを短く、リズム良く整えることを意識できていると感じたので、この調子で頑張って欲しいです。

編集部コメント

  • 独特の世界観を持っていて、ハマる人にはハマりそう。
  • 一つ一つのエピソードはよく書けてるが、全体を通した軸が弱い。幻想管理人の話より、虚構種を殺す話に寄ってしまっている。
  • 構成は連作短編の方がよかったのでは。
  • 桐生さんとの話が一番面白かった。鬼として、少女としての葛藤がよく書けてる。むしろこの方向に絞った方が面白くなるのでは。

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