『三人目の魔女が来る』桐野有音
主人公の桂馬が、下駄箱で3通の手紙をもらうところから始まるストーリーはラブコメとしてまとまりがあり、最後まで引きを作りながら結末を迎えることができていたと思います。
その一方で、壮大な規模で物語展開させるべく設定をたくさん盛り込んでいるので、状況を理解するのに時間を要する点は改善点のひとつかと感じています。
レティナとの絡みをもっとメインに据えてシンプルに構成するのもよかったかもしれません。
ただ作者は、魅力的なラブコメを作る力のある、期待の出来る方だと思います。
まとまりのある構成で、最後まで引きを作りながらペースを落さず、結末を迎えることができていたと思います。主人公の語りやリアクション、ヒロインたちとのやりとりはテンポが良く作品の魅力になったかと思います。ですが、宇宙規模で物語が展開していた割には、最後の落し所で急にそのスケール感を狭めてしまったのが非常に残念です。
この作品で重要なのは「神谷と伊南の勝敗にどう決着がつくのか」ですが、最初の段階でほとんどの読者は勝敗を予想できてしまうし、その予想通りの結果となってしまいました。勝敗の決着で予定調和を崩すほどの展開があれば、さらに高評価に繋がったかと思います。
また、読んだ感触はラブコメの印象が強かったのですが、ジャンル設定は「青春」と「SF」。「青春」と言えるほどの瑞々しい展開も少なかったので、ご自身がどのような方向性で作品を書きたいのか今一度見直すことが求められるかと思います。
- ラブコメとしてまとまりがあり、最後まで引きを作りながら結末を迎えることができていた。
満足度の高い結末を描けていたのも好印象。 - レティナが魅力的に書けているので、主人公とレティナの掛け合いがもっと欲しかった。
- 序盤は状況を理解するのに手間取った。設定が込み入り過ぎているかもしれない。
- 構成にやや難ありか。中盤の天下一武道会みたいな勝負がずっと引き分けなのがすぐ分かってしまう。