『三人目の魔女が来る』桐野有音

編集長コメント

主人公の桂馬が、下駄箱で3通の手紙をもらうところから始まるストーリーはラブコメとしてまとまりがあり、最後まで引きを作りながら結末を迎えることができていたと思います。
その一方で、壮大な規模で物語展開させるべく設定をたくさん盛り込んでいるので、状況を理解するのに時間を要する点は改善点のひとつかと感じています。
レティナとの絡みをもっとメインに据えてシンプルに構成するのもよかったかもしれません。
ただ作者は、魅力的なラブコメを作る力のある、期待の出来る方だと思います。

担当編集コメント

まとまりのある構成で、最後まで引きを作りながらペースを落さず、結末を迎えることができていたと思います。主人公の語りやリアクション、ヒロインたちとのやりとりはテンポが良く作品の魅力になったかと思います。ですが、宇宙規模で物語が展開していた割には、最後の落し所で急にそのスケール感を狭めてしまったのが非常に残念です。
この作品で重要なのは「神谷と伊南の勝敗にどう決着がつくのか」ですが、最初の段階でほとんどの読者は勝敗を予想できてしまうし、その予想通りの結果となってしまいました。勝敗の決着で予定調和を崩すほどの展開があれば、さらに高評価に繋がったかと思います。
また、読んだ感触はラブコメの印象が強かったのですが、ジャンル設定は「青春」と「SF」。「青春」と言えるほどの瑞々しい展開も少なかったので、ご自身がどのような方向性で作品を書きたいのか今一度見直すことが求められるかと思います。

編集部コメント

  • ラブコメとしてまとまりがあり、最後まで引きを作りながら結末を迎えることができていた。
    満足度の高い結末を描けていたのも好印象。
  • レティナが魅力的に書けているので、主人公とレティナの掛け合いがもっと欲しかった。
  • 序盤は状況を理解するのに手間取った。設定が込み入り過ぎているかもしれない。
  • 構成にやや難ありか。中盤の天下一武道会みたいな勝負がずっと引き分けなのがすぐ分かってしまう。

『鮮血のコントラクト』六藤幸一

編集長コメント

吸血鬼の主と眷属の関係性を強く見せてキャラを動かしていたのはわかりやすくてよかったです。
吸血シーンなどは読者を楽しませようとするエンターテイメント精神が感じられました。
ただ、流行の設定であるだけに、他作品にない強烈な個性がひとつあると、なお一層よかったのではないかと思います。
これだけボリュームのある小説を仕上げられていて、かなりの実力のある方だと、思いました。

担当編集コメント

とにかくメインヒロインの真白が可愛い! というのが印象的でした。主人公のフィングに対して優しいお姉さんのように振る舞ったかと思えば初々しい恋人のように拙く甘えたり、ヤキモチを焼いたり想い焦がれたりと、可愛いが過ぎました。
『眷属』と『主公』という契約で結ばれたフィングと真白をもっと見守っていきたいと思えた点は、非常に良かったです。ドリアードやウルティアといったキャラクターにもそれぞれ魅力があり、物語を彩っていました。
ストーリーや設定面はまだまだ粗削りな部分がありましたが、こういうのが好きなんだ!!! と叩き込んでくる姿勢があり、ブラッシュアップによってよりよくなると感じました。
エンタメの勘所を押さえて書けている印象でしたので、今後その精度を磨き、研ぎ澄ましていただければと思います!

編集部コメント

  • ヒロインの真白が可愛い。ファンタジーであり流行の要素を押さえていた点は好感が持てる。
  • 吸血鬼をネタにして、主と眷属の関係性を強く見せてキャラを動かしていたのは良かった。
  • 人外の魅力を読者に伝えるには描写が淡白すぎる印象。
    文章は読みやすく、表現・情報量も適正だった分、読者を引き付ける展開にもう少し工夫がほしかった。
  • 吸血鬼モノのお約束を取り入れているがゆえの既視感があるので、より自分なりのオリジナルを入れるとさらに楽めた。

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