『激情版視覚型恋愛錯誤』常世田健人
モテ期が来たことがわかる特殊な世界で繰り広げられる、学園ラブコメ。
現在大ヒット中の学園ラブコメにも通じる設定で、冒頭の主人公大井戸の告白シーンから、作品世界に引きつけられました。
そのあとの、大井戸と新浪先生との会話はテンポよく面白くてずっと読んでいたいと思わせるほどでした。作者の常世田さんの非凡なセンスを感じました。
そのあと大井戸は、紆余曲折を経て、モテるために演劇部入ることになります。期待が高まりましたが、その後の展開は少し物足りなかったように思います。
個性的な女子部員と大井戸との絡みを、もっと紙幅を割いて書いて欲しかったです。
とはいえ、今後のライトノベルの新たなトレンドとなる可能性を持った、作品で作者であると思います。
人生に必ず三回やってくる『モテ期』をテーマに描いた、冴えない男子高校生の青春ラブコメディ。
いつそのタイミングが訪れるかは分からないものの、誰しもにくる『モテ期』のタイミングが自分にお知らせされるという舞台装置は突飛ながらも、この物語のフックとして成立していました。
高校2年生になってもいまだ『モテ期』を迎えられず、告白してもフラれてばかりの冴えない主人公。そんな主人公がただただモテたいという一心で、部活にバイトに学業に打ち込み青春を謳歌していく様をコミカルに描き、また前編を通して爽やかに軽快に物語が進んでいくのも評価が高いです。
しかし恋愛を描くにあたり重要な、恋の切なさや苦しさ、嬉しさなど主人公はもちろん、その他のキャラクターたちの心情がもっと描かれているとより一層ストーリーに深みが出るのでは。読み手がしっかりと主人公に寄り添えるような、そんな物語にできればさらにいい評価を得られたと思います。
誰もが楽しめるエンターテインメントを描ける、筆力のある作者だと思いますので、今後の活躍を楽しみにしています。
- 設定を上手く生かせればもっと面白い作品になると感じました。キャラクターを効果的に動かせてない印象がありますので、もっと各キャラクターを印象付けられるようにして頂くとより面白くなると思います。
- 面白おかしいノリの世界観、キャラの掛け合いを書こうとしている熱意が伝わりました。ただ、設定やキャラクター性を上手く生かし切れていません。その部分をもっと意識できればさらに磨きがかかると思います。
- ひとつのネタだけで書き切ったことは好印象でしたが、ところどころ作品の設定の詰めが甘いと感じました。明るいネタで楽しく読めました。
- 設定の勢いで攻めているのと会話で盛り上げていこうとする内容に惹かれました。一方で、勢いにまかせてスムーズに読めるものの、最後に頭に残るものが少ないという印象があります。設定とキャラクター性をひとつひとつ精査していくと良いと思います。
- モテ期という設定がいかに面白いものかを効果的に読者へ伝え切れていないと感じました。設定の切り口を変えるとともっと物語を面白く展開させられたので残念でした。モテ期が当たり前のように受け入れられているので、さまざまな価値観や葛藤、切り口を出していかないとその設定の面白さや奥深さが伝わらないと思います。