――スーパーがその日の営業を終える幾ばくか前。その時間、店内は半額弁当を求める誇り高き者……《狼》たちのバトルフィールドと化す――

 閉店間際のスーパーを訪れた主人公・佐藤洋はわけもわからないまま凄まじい戦いに巻き込まれてしまう。
 それは《狼》と呼ばれし者たちによる、毎夜行われる夕食と誇りを懸けた半額弁当を求める争奪戦であった。
 佐藤はひょんなことからハーフプライサー同好会という半額弁当を求めるためだけに存在する部活に所属することになり、先輩の槍水仙、そして同級生の白粉花と共に《狼》となってスーパーを駆け始める。

 ……《アラシ》、《ダンドーと猟犬群》、《大猪》、そして従姉の《湖の麗人》、東区の狼たちを総動員して隣街からの大規模な侵攻作戦を展開した《ガブリエル・ラチェット》と《帝王》……

   半額弁当の前に立ち塞がる、二つ名という強者の証を持つ者たち。
 佐藤は彼らと技を競い、自らの誇りと生活を懸けて今夜もまたスーパーで激しい戦いを繰り広げる――。


・HP同好会
 主人公たちが所属する同好会。
 元々は部≠セったが、現在、所属人数の関係から同好会≠ノ格下げとなった。しかし特別に部室貸し与えられている。
 本来はスーパーで半額になった弁当を如何にして手にするか、ということを研究、実行するための組織であったが、現在はあやふやな存在となっている。
 何も知らない人が読むと、確実に『ホームページ同好会』と間違われるが正確には『ハーフプライサー同好会』と読む。

・狼
 スーパーでの暗黙のルールを理解し、誇りを持って半額弁当の奪取に当たる人間のことを指している。
 無論、実際の狼は半額弁当を求めてスーパーに行ったりはしない。
 またよく狼には凶暴なイメージがつきまとうが、実際にはそれほどではなく、縄張りを荒らしたり不用意に刺激したりしない限りまず人は襲わないとされる。

・犬
 半額弁当を狙ってスーパーにやってくる未熟者を指している。
 余談だが、猫派か犬派かと問われれば著者は犬派。それも大型犬が特に好き。

・半額神
 総菜、弁当等に半額シールを貼る店員のこと。敬意をこめて神≠ニ称えられている。

・サバの味噌煮
 サバを味噌で煮込んだもの。うまい。

・ザンギ
 北海道の人間からすると鶏の唐揚げの代名詞的存在。北海道の若者の中にはザンギが地域限定の存在だと知らない者も多い。
 ただの唐揚げと同一視する人もいるが、実は別物とする場合が多い。しかしながらその名前の由来同様、唐揚げとの境界線は不鮮明である。
 著者の持論からすると、醤油等で濃いめに下味がつけられ、卵と小麦粉(または片栗粉)を混ぜた衣をまとってから揚げられたものをザンギとしている。
また通常の唐揚げと違って、ザンギは大きい塊状の場合が多い……と思う。

・二つ名
 主に《狼》の中から特出した強さ、個性を有する者に自然と付く本名とは別の名のこと。あだ名。
 基本的にその者の見た目や、戦闘スタイル、経歴などから付けられる。
 ただしある程度有名になれば《狼》でない者にも付けられる場合もある。

・氷結の魔女
 HP同好会の会長、私立烏田高等学校二年、槍水仙の二つ名。
 その名は、スーパーでの悲しい過去の出来事が由来となっている。

・魔道士(ウィザード)
 私立烏田高等学校三年、金城優の二つ名。
 彼の服装や雰囲気等に加え、圧倒的な強さ故に熟練者の意味合いとして、その名で呼ばれている。

・著莪あやめ
 丸富大学付属高校一年。ベン・トーの主人公(?)である佐藤 洋の同級生の従姉。金髪碧眼のハーフ。ゲームはセガ派。
 その見た目と、レイクパークと名付けられた公園のベンチで寝ていたことから《湖の麗人》という二つ名がついた新人。

・井ノ上 あせび
 丸富大学付属高校一年。いつも猫の帽子を被っている、かわいそうな子。
 自分を含め、周囲に不幸をもたらすため、未だ半額弁当を手に入れたことがないのに《死神》という二つ名を有している特異な存在。

・松葉菊
 かつて最強と呼ばれた《女帝》であり、現役時代は『庶民経済研究部』の部長を勤めた女性。現在は結婚し、スーパーで半額神として働いている。

・名もなき狼たち
 二つ名を持たない狼は無数に存在する。
 もちろん二つ名を目指して日々奮闘する者もいるが、ただ自らの食生活のために戦っている者も多い。彼らが戦場に赴く理由は人それぞれである。
 なお、作中において主な者たちには次の三人がいる。
 ○顎髭の男:烏田高校の生徒。坊主とつるんでいることが多い。
 ○坊主頭の男:烏田高校の生徒。顎髭とつるんでいることが多い。
 ○茶髪の女:烏田高校の生徒。大変いい胸を有する。

・《ガブリエル・ラチェット》
 丸富大学の庶民経済研究部に所属する諜報組織。特定の状況においては組織的な戦闘を展開することもあった。
 現在(三巻において)はすでに解体されたが、今なお構成人員を含めその詳細は秘匿にされており、唯一判明しているのは頭目であったのが、丸富大学二年、二階堂 連だということだけである。

・古狼
 一般的に一線を退いた狼のことを指すが、明確にそれと定める基準はない。
 ただ、現役時代に名を轟かせた二つ名持ちか、それに準じる強さと経験を有した者に対して使う場合が多い。

・うなぎ
 昨今、産地偽装などで何かと話題のお魚。
 知っての通り夏、それも土用の丑の日などによく食べられるが、実は冬が旬だったりする。
 作中(三巻)においては、主に蒲焼を指している場合が多い。
 どうでもいいが著者の母方の祖母は、昔から何かある度に「うなぎは? 食べる?」とすすめてくる。


 どうも、アサウラです。
 皆様のおかげで、誰もが予想だにしていなかったベン・トー三巻めを出せる運びとなりました。本当にありがとうございます。おまけに何の気まぐれか、また特集を組んでいただけました。そろそろ東京でも雪が積もりそうな気配です。
 ベン・トーの新作を出す度に、いろんな人から「え? あのイロモノ小説、まだ続くの?」とよく言われるのですが……こうして何とか続けられております……えぇ、はい。
 今後とも、皆様、どうか温かい目で見守っていってください。よろしくお願いいたします。