残暑というにも暑すぎる九月初旬。無事に『パパのいうことを聞きなさい!8』の入稿を終えた松智洋先生となかじまゆか先生に、コミカライズ七誌計画、そしてついに発表されたアニメ化についてお話しを伺いました!
【メディアミックス開始までの道のり】
丸宝: ご無沙汰しています。久々にHPでの対談ということでお二人に集まって頂きました。宜しくお願いします
松: そういわれれば結構久しぶりかも知れないですね
なかじま: 前回は6巻が出る前ですから、今年の一月ですね
松: その頃も既に忙しかったですけどね(笑)
なかじま: ええ。なんだかずっとパパを描いていたので時間の感覚ないです
丸宝: 今日はその辺も語って頂ければと思いますが、新刊である8巻の発売に合わせて、たくさん始まったコミカライズについて色々と語って頂きたいと思います。まずは、編集部から改めて紹介させて頂くと、現在、コミカライズ七誌計画(プロジェクト)として集英社の漫画誌6誌で『パパのいうことを聞きなさい!』のコミカライズが展開される予定で、それにSQ.19の読み切りや他の漫画誌でのピンナップ等も計画があることから、6誌+1の七誌計画として展開しています。集英社始まって以来の巨大プロジェクトですよ
松: そう言われると緊張しますね
なかじま: 正直、実感ないです
丸宝: ジャンプSQ.を始めヤングジャンプやウルトラジャンプ、クッキー、雑誌コバルトなどの主要誌で連載が決まるっていうのは、私も聞いたことがないレベルです。高い期待の表れだと思って頂きたい
松: ま、まあ……今以上のことは出来ないですけどね
なかじま: いっぱいいっぱいで頑張ってますから
丸宝: この計画は、もともとジャンプSQ.とヤングジャンプから似たタイミングでコミカライズの打診が来て、他の雑誌も興味があるか問い合わせたところ、これだけ多くの雑誌での掲載が決まったのが始まりです。もちろん、松さんが漫画原作を自分で書くタイプの作家さんでなければこれだけ多くの展開を作ることは出来なかったわけですが
松: お話を聞いたときは、すごいと思いましたね。即答でお引き受けしました。いやあ、でも自分でやるって言ったんだから文句はないんですが、全部のスピンオフで原作を書くと言ったあの日の自分を二、三発殴りたいです
なかじま: いや、最初から無茶だって思ってましたよ。そういったじゃないですか(笑)
松: そうなんですけど! あのときはやれると思ったんですよ!
なかじま: その頃にはアニメのお話も進んでましたし、松先生は何人いるんですかって感じでしたよね
松: 僕は算数が苦手なんですよ……
丸宝: まあまあ、実際何とかなってるんだからいいと思います。編集部としては頑張って頂ける限り応援する前提ですから
松: は、はい……ま、まあ、なんとかかんとか……
なかじま: 松先生、ファイト
松: いやいや……でも漫画、アニメとも動き出して良かったですよ。アニメも昨年末くらいから動き出したんでしたっけ?
丸宝: そうだね。平行してたからチーム全体がてんやわんやでした。なかじま先生にも色々デザインの確認や描き下ろしをたくさんして頂いてお疲れ様でした
なかじま: 今も現在進行形でたくさん描いてます(笑)
丸宝: お世話おかけします。さて、ではまずはメディアミックス記念ということで、各誌ごとにコミカライズの特徴を語って頂ければと思います。
【原作本編を生かしたジャンプSQ.】
丸宝: ではまずはジャンプSQ.から。一番最初に決まったコミカライズですよね
松: はい。ジャンプSQ.で竹村洋平先生が描かれているのが、コミカライズにおける本編の扱いです。漫画用に再構成していますが、小説の展開をベースに広げています
なかじま: 竹村先生の漫画を拝見して、「自分で描かなくてよかった」と思いました。竹村先生、漫画上手すぎです! 弟子入りしたいです…!
松: でもネームを何度も直して頑張って頂いた結果ですし、なかじまさんの絵に似せるべく凄く工夫してくれてましたよ
なかじま: ありがたいです。そういえば漫画版は原作より肌色多めですよね
松: そこはそれ、読者のニーズに沿った形で(笑)
丸宝: 人気的にも順調な滑り出しと聞いています
松: SQ.での連載も二作目なので、結果が出て良かったです……
なかじま: だけどSQ.19は衝撃でした(笑)
松: ああ、あれは子育てのよくある1ページですから。アレを見てヨコシマなことを考える人はいないはずです。ま、清い心で読んで頂ければ(笑)
なかじま: そうですよね! 子育て漫画におもらしはつきものですよ!
丸宝: 問題ないと思います(笑)
松: 原作7巻にもあるエピソードの改造ですしね。これからもSQ.版は、漫画用に調整しながら原作に沿ったストーリーを新しい切り口で演出していくつもりです。竹村先生の漫画力は素晴らしいので、ガンガン攻めて行きたいと思っています
なかじま: アニメの展開ともあわせて、これからも楽しみですね!
【ご近所が舞台のウルトラジャンプ】
丸宝: 次は、発売日順ということでウルトラジャンプをお願いします。現在一話目が掲載されたところですね
松: ウルトラジャンプ以降のスピンオフにはサブタイトルがついていて、この作品は「小鳥遊の陽だまり」です。八王子時代のアパート暮らしで知り合う、同じアパートの人たちや近隣の人、祐太のバイト先の人などをフューチャーしたストーリーになっています
なかじま: 毎回、違うキャラクターが出てきて楽しいです
松: 実際、アニメ化が決まってから作ったサブストーリーなので、ウルトラジャンプ版は新キャラクターが多いです。それにアニメ版との絡みが本編の次に密接で、アニメ版で出てくるキャラクターを先取りで登場させています
丸宝: ルナルナ7なんかは、アニメ版からのスピンオフだよね
松: それはネタバレになるかも知れないので、どこまで言っていいか分かりませんが(笑)
なかじま: いろいろな漫画家さんがパパを描いてくださっていて楽しいです。お一人ずつまったくイメージが変わるので、いっそ勉強になります(笑)
松: いやいや、もともとなかじまさんの作ったデザインあればこそです。でも、サブキャラは巨乳キャラが多いですよね。三姉妹が三姉妹だけに対比と言いますか
なかじま: 莱香さんがいますよ
松: 八王子の初期だとあんまり莱香は出てこないんですよねー。なので自分的におっぱいのバランスを考えて漫画家さんたちにお願いしています(笑)
丸宝: 現在発表されているのは、わだぺん。先生、F4U先生、桐原いづみ先生ですね
なかじま: 豪華ですよね〜。毎回楽しみにしてます
松: 先生方の素晴らしい漫画に負けないように頑張りたいです
【正統派少女漫画のCookie】
丸宝: では次は少女漫画雑誌であるCookieを行きましょう。こちらも現在一話目が掲載されています
なかじま: 絵が、可愛いですよね! それにおしゃれな感じです
松: いやー、正直、こんなに見事に少女漫画にハマるとは思いませんでした。素晴らしいと思っています
丸宝: クッキーのサブタイトルは「美羽様のいう通り!」で、次女、美羽のお話ですね
松: はい。もともと、少女漫画等で展開するなら美羽かな、と話をしていたのですが、クッキーの編集さんたちと話をするとやはり少女漫画としては「美羽と仁村ですね!」と。美羽は分かるけど仁村は予想外でした(笑) それで色々打ち合わせさせて頂いて、やっぱりこれは僕では力不足かな、ということで設定とあらすじを書いたプロットだけお渡しして、漫画家の加藤友緒先生にお任せすることにしました。結果は大正解でしたね
なかじま: すごく……少女漫画です(笑)
丸宝: クッキー版の美羽たちは実際着替えるしおしゃれだよね
なかじま: そうなんですよ。やっぱりラノベを描くときにはある程度、服は記号なので着替えさせたくてもあんまり色々着せられないじゃないですか。少女漫画はいっぱいお着替えできていいなあ、って(笑)
松: 東方の衣装も着てたしね。あれは僕の指示じゃないってのが頑張ってくれてる気がする部分ですよ(笑)
丸宝: 暖かい空気はきちんとパパらしいですし、とても魅力的な漫画だと思います
松: 二話以降は原作の裏側を掘り下げるような形の美羽と仁村しか知らないオリジナルストーリーが展開します。楽しみにして頂ければ嬉しいです
【小説誌で漫画連載? 雑誌コバルト】
丸宝: 次は、10/1発売予定の雑誌コバルトで連載開始予定の「うさぎのまぁく」についてお願いします
松: これはひなの保育園での生活を描くほのぼのストーリーですね。八王子の保育園に転園したひなが、どんな風に一巻ラストのお遊戯会までの日々を過ごしたかを描きます
丸宝: 漫画は『ほのかLvアップ』などで有名なMATSUDA98先生にお願いしています。とても可愛い絵を描かれる方ですよね
なかじま: 私もよく存じ上げています。とても素敵な漫画を描く方なので、完成がとても楽しみです
松: すでに一話目のネームは上がっているんですが、本当にいい感じです。正直、原作通りだけど原作者である僕の予測を超えているという感じで、読者の反応にいまからワクワクします
丸宝: この連載だけが小説誌での連載というのも珍しい形ですね。男性読者には『マリア様がみてる』で知られるコバルト文庫の持っている雑誌で、元々、SD文庫とコバルト文庫は姉と弟の関係なので、今回、お姉さんに頼んでプロジェクトに協力して貰っているようなイメージです
松: それは……なんかいい話ですね(笑)
なかじま: 一緒にコバルト文庫の小説も読んで貰えれば面白いですよね〜。パパはホントに珍しいことが色々おきますね(笑)
【スーパーダッシュ文庫の新雑誌、スーパーダッシュ&ゴー!】
丸宝: さて、発売順で言うと今度は我がSD文庫が創刊する漫画新雑誌、スーパーダッシュ&ゴー!ですね! もちろん、編集長は私、丸宝です!
なかじま: パチパチパチ(拍手)
松: いやー、頑張ってください
丸宝: スーパーダッシュ&ゴー!はSD文庫が誇る人気小説のコミカライズを中心に、様々なメディアミックスを通して新しい面白さを追求する新雑誌です。そしてその創刊の目玉のひとつがこの作品になります。パパのいうことを聞きなさい!のスピンオフを、週刊少年ジャンプで人気作『P2!』を描かれた江尻立真先生を迎えて展開します!
松: びっくりですよね。『P2!』は個人的にも大好きでしたから
なかじま: 週刊少年ジャンプで描かれていた方に描いてもらうのはドキドキしますね
丸宝: これも編集部の期待の表れだと思って頂ければ
松: 無駄にプレッシャーをかけますね(笑) 江尻先生には長女、空の物語を描いてもらいます。しかもこれは時系列すら完全なスピンオフで、空の中学入学から始まる合唱部での物語『空色の響き』です。ぶっちゃけ、基本、祐太が出てきません(笑)
なかじま: それは思い切りましたね
松: その代わり、祐理や信吾といったキャラはまだ元気に登場しますし、まだ原作でもあまり語られていない合唱部と空の関わりを描いていく青春ストーリーです。つーか、美少女の登場数的には、こっちをアニメ化した方が売れそうだという勢いで美少女いっぱいです(笑)
なかじま: そ、それは……想像もつかないです(笑)
松: まあ、全体に比較的、原作を表としたらその裏側を描くようなスピンオフが多いので、もう極端にしちゃおう、と。そしてスピンオフと言えばガールズトークですよ!(笑)
なかじま: な、なるほど! わかります(笑)
丸宝: 美人いっぱい、いいねぇ。美少女はラノベの花だよ
松: 漫画自体も、パパの世界と江尻節というべきまっすぐなキャラクターが上手くかみ合って、読み応えのあるものに仕上がっていると思います。これも読者の反応がとても楽しみな作品になってます
なかじま: スーパーダッシュ&ゴー!には私もカラーイラストを描いてますので、宜しくお願いいたしますー
【超番外! ヤングジャンプはエ○コメ路線!?】
丸宝: そして最後になります。大展開のトリを勤めてくれるのは週刊誌! 集英社の誇るNo1青年誌ヤングジャンプですよ!
なかじま: ……今回のプロジェクト最大のびっくりですよね
松: ホントに。まさかヤンジャンにパパが載るとは……
丸宝: いやいや、もとは先方から打診があってのことだからね。評価されているんですよ
松: ありがたいことですが……
なかじま: それで、ヤンジャンはどんな漫画になるんですか?
松: えーと、基本は『路上観察研究日誌』というサブタイトルで大学生活、祐太の入学からロ研での日常を追う感じなのですが……まあ、なんというか、ヤンジャンで人気が出るように〜、と考えていたら、次第に……その……エロい方向に……
丸宝: えー? SQ.版だって肌色増えてるでしょ?
松: い、いや、あの、まー、そういうレベルじゃなくてですね。ほら、まあ、ヤンジャンは青年誌だから(笑)
なかじま: かなり過激ってことですか?
松: あははは、ぶっちゃけ
丸宝: それは思い切ったね〜
松: まあ、基本的にキャラ優先なので、人物の性格付けやキャラ性は変わりませんが、切り口や見せ方はかなりエロコメ路線です。まったく原作を知らない青年誌読者が楽しめるように、キャラは同じだけど別の話ってくらいにイメージ違うと思います
なかじま: じゃあ、江尻先生版に近い感じですね
松: い、いやそうとも言えなくて……時系列的にはSQ.版の次に本編に近いんですが、演出的には全然違うし、ついでに三姉妹の登場が現状の原作だと凄く遅かったり……少なくとも最初のうちは三姉妹が全然出てこないですね
丸宝: そ、そうなの!?
なかじま: すでにパパじゃない感じですね(笑)
松: でも原作一巻でも、冒頭のプロローグが終わると三姉妹が出てくるまでに全体の1/4くらいは大学生活で進みますから……ま、まあ原作通りと言えばそのような……
丸宝: とにかく、ヤンジャン版は大冒険ってことですね
松: 漫画自体は新人の宮乃ひろつぐ先生が凄く感張ってくれていて、なかじまさんの絵の再現度としてはトップクラスなので……ま、まあ色々と読者の方には満足して頂けるのではないかと。性的な意味も含めて(笑)
なかじま: なんかドキドキしますが……完成を楽しみにしています
【そしてアニメ化について】
丸宝: さて、ここまで駆け足でコミカライズの各誌展開をご紹介して来ましたが、同時に、既に発表されたアニメについても少し
なかじま: 頑張って描いた商業デビュー作がアニメ化されて感無量です……
松: 二作連続アニメ化は出来すぎなので、何かバチでも当たらないか心配です……
丸宝: 編集部としても、この人気作が素晴らしい形で展開出来てほっとしています。スターチャイルド様と集英社を中心にこれから盛大に盛り上げていきたいと思います
松: といっても、まだ僕たちもそれほど情報を持ってないというか……
なかじま: キャラCDのジャケットを描いたりはしてますけど、アニメ全体についてはどれが決定なのか分からないことばっかりですよね
丸宝: まあ、アニメは多くの人たちが絡むので、発表一つ取っても気を遣いますよね
松: 今、漫画やアニメの展開をまとめたサイトを作って紹介を始めています
『パパのいうことを聞きなさい! ポータル』で検索して頂ければすぐに見つかりますので、チェックしてみてください。まだ最速って感じじゃないですが、これからコンテンツも増やしていくつもりです。書き下ろしSSも検討中です
丸宝: このHPの最上段にあるバナーからいけますよ
なかじま: どんどん盛り上がるといいですね〜
【小説8巻のご紹介!】
丸宝: 最後になりましたが、今月発売の小説8巻について紹介お願いします
松: はい。三月三日、ひなの誕生日を巡る物語です。両親が行方不明になっていることを知らないひなは、誕生日には両親に会えると信じています。その気持ちをどういう風に家族が包んでいくのか、そういうお話です
なかじま: 今回も優しいお話ですよね
丸宝: 迷い猫からずっとそうだけど、松先生の書く話はいつも浪花節だよね
松: うーん、そうですね。最後は、いい話で終わりたいとは思っていますが(笑)
なかじま: 今回は恋愛的にもちょっとありますよね
松: そうですね。サーシャが再来日しますし(笑)
なかじま: デザイン頑張ったキャラなので再登場は嬉しいです(笑)
丸宝: これだけ日常的な出来事を中心に書いてるのに、テンションが落ちないのは凄いと思います。今回も涙をこらえるのが大変な出来でした
松: ありがとうございます。次第に自然体になってきた分だけ、日常は楽しく、でもたくさんの課題を抱える子どもだけでの暮らしの部分では辛いことも苦しいこともあるけれど、それでもみんなで明るく乗り越えていく……そんな話にしたいです
なかじま: だんだん、一巻で進む時間が短くなってますよね
松: そうなんですよ。書きたい事がありすぎて……でも今のペースだと、作中で一年進むのに十巻じゃ足りなくなりそうです(笑)
丸宝: 編集部としては全然構いませんが(笑)
松: いやいや、死んじゃいますよ。書くの自体は楽しいですけどね
なかじま: パパのキャラクターはみんな魅力的なので描いていて楽しいです。流石に新キャラは減ってきましたね
松: 作中で四月が来たら増えるんじゃないですかねぇ……
なかじま: えっ? まだ増えるんですか……が、頑張ります……
丸宝: とにかく、今回も素晴らしい内容になっています。これからもお二人には頑張って頂きたいと思います
【終わりに】
丸宝: それでは、最後に一言お願いします
松: 皆さんの応援のおかげで、パパのいうことを聞きなさい!は大きく育てて頂きました。最大限努力して良い作品を書くことで、読者の皆さんにお礼を届けたいと思います。本当にありがとうございます。これからも宜しくお願いいたします。
なかじま: はじめて商業の作品に関わらせて頂いて、右も左も分からずいっぱいいっぱいで描いてきたことを、評価して頂いたようでとても幸せです。アニメもコミカライズも、お手伝い出来ることはなんでも頑張って、読者の方に喜んでもらえるようにこれからも頑張ります。どうか宜しくお願いいたします。
丸宝: 編集部としても、この作品に賭けて頑張っています。これからのパパのいうことを聞きなさい!の展開、そして新雑誌SD&GOを何とぞ宜しくお願いいたします!