『魔弾の王』シリーズ全ての原点である『魔弾の王と戦姫』が、原作者川口士自身の手による
本文大幅加筆修正×白谷こなかによる全イラストの描き下ろしで、全7巻の合冊版として復刊!!
『魔弾の王』シリーズ全ての原点である『魔弾の王と戦姫』が、原作者川口士自身の手による
本文大幅加筆修正×白谷こなかによる全イラストの描き下ろしで、全7巻の合冊版として復刊!!
「それで、おまえはいままで何人を惚れさせたことがある?」
ティグルは無言で両手をあげて降参した。
とくに美形というわけでもなければ、さほど裕福でもない田舎貴族だ。ただでさえ若い娘との出会いが少ないのに、惚れられるわけがない。
「ともかく、そうした噂に過剰反応した部下たちが、噂の元を断つためにいっそおまえを殺してしまえと言ってきてな」
エレンは意地の悪い、それでいて楽しげな目をリムに向ける。ネズミをなぶる猫のようだった。
「まちがったことを進言したとは、いまでも思っておりません」
「それで、おまえはいままで何人を惚れさせたことがある?」
ティグルは無言で両手をあげて降参した。
美形というわけでもなければ、裕福という言葉にはほど遠い田舎貴族だ。ただでさえ若い娘との出会いが少ないのに、惚れられるわけがない。
「脱線したな。そうした噂に過剰反応した部下たちが、噂のもとを断つために、いっそおまえを殺してしまえと言ってきた」
エレンはからかうような目をリムに向ける。彼女は微塵もうろたえることなく、主の視線を受けとめた。
「進言が間違いであったとは、いまでも思っておりません」
ブリューヌ王国の若き貴族であるティグルヴルムド=ヴォルンは、隣国ジスタートとの戦で、敵将である戦姫エレン――エレオノーラ=ヴィルターリアの捕虜となる。
行動の自由を奪われながらも、エレンと徐々に打ち解けていくティグル。そこへ、彼の領地であるアルサスの危機が知らされ、ティグルは己の民を守るために立ちあがる。それ は、ブリューヌ全土を舞台とする熾烈な戦いのはじまりだった。
のちに魔弾の王となるティグルと、彼とともに戦う七人の戦姫たち、ティグルたちを支える数多の勇者たちの物語が幕を開ける。