「神聖裁判をはじめます。アルさまに害を為す者など、死刑以外にありえませんね」 「待て、シルファ。面倒な敵を増やすんじゃない」 神聖フィリア帝国の皇子であり、妾腹の子であるアルヴェールは、皇帝である父を憎み、己の力で名声を得るため、遊歴の騎士として旅をしていた。 旅の仲間は二人。神敵と見做した相手には容赦なく大鎌を振るう一方、アルヴェールをアルさまと呼んで慕い、隙あらば夜這いをかけてくる女神官、「聖女」シルファ。 そして、戦いと食事と英雄伝を好み、アルヴェールと契約を結んだ身でありながら、尊敬する様子が一切ない「セラフィム」のセイラン。 旅の中で、アルヴェールたちは「地底樹」と呼ばれる巨大な魔物に関わっていくこととなる。だが、魔物の裏には、帝国を滅ぼそうと企むひとりの魔術師の暗躍があった……。
左手の魔術刻印を見た女性を虜にする――《寝取り王》の『呪い』を受け継いでしまった少年グレイ=フレイル。 「魔術で女の子をたぶらかすなんて、外道のすることだ」と周囲の人間を遠ざけ生きてきた彼は、寝取りの呪いが通用しない魔術師のアリスと出会う。 「ほ、本当に君は、これを見てもパンツを脱ぎたくなったりしないのか!?」 「あたしはそんなに安い女じゃないわよ!」 《寝取り王》の呪いを解くために、大陸の知の殿堂と謳われる図書館塔《ダンテ》に忍び込む二人。 グレイは謎めいたアリスに惹かれながら、彼女が背負う重すぎる宿命と、この世界にまつわる巨大な秘密と対峙することに――!? 「アリスのために、俺は《寝取り王》になる!」 世界を敵に回した少年と少女の新たな神話が幕を開ける。
セラフィムのセイラン、女神官のシルファとあてどもなく旅をしている騎士。21歳。
神聖フィリア帝国の第三皇子だが、妾腹の子であり、皇子らしい扱いをされてこなかった過去を持つ。父とひとつの約束をかわし、旅の中で大きな名声を得ることを目標としているが、道は遠い。シルファとはおたがいを想い合う仲で、そのことを教会に知られると困るので秘密にしているのだが、ことあるごとに大胆に迫るシルファに手を焼いている。
聖フィリア教会に仕える女神官で、「聖女」の称号を与えられている。18歳。
15歳までは敬虔な神官として日々を過ごしていたが、そのときに起きた事件と、アルヴェールとの出会いが彼女の人生を大きく変えた。彼女はアルヴェールを強く想い、持てるすべてをアルヴェールに捧げようとする。神聖裁判によって敵と見做したものには容赦なく、その一方でアルヴェールには夜這いをはじめさまざまな方法で関係を迫っている。
神話の時代に神々によって造られ、地上に落ちてきた鋼の戦士。それがセラフィムである。
人間と主従の契約をかわすことでセラフィムは目覚め、主のために戦う。
アルヴェールが16歳のときに、セイランは彼と出会い、それからともに旅をしている。
大食漢で、聞きかじった英雄譚や武勇伝の一節を使う癖がある。蹴りを主体とした戦い方のために、アルヴェールに買ってもらう靴をたびたびだめにしている。
神聖フィリア帝国の第一皇女で、アルヴェールの腹違いの姉であり、剣の師。弟からはクラリス姉と呼ばれている。23歳。
傲岸不遜な性格で、アルヴェールのことを愚弟と呼び、シルファとは非常に仲が悪く、顔を合わせればすぐに口喧嘩をはじめるほど。だが、アルヴェールのことは彼女なりに気にかけている。帝国の南部で起きたとある事件の処理に携わっており、アルヴェールに協力を依頼する。
ジャーマル連邦の地方領主の長男。
16歳。《寝取り王》と呼ばれた英雄ヴィル=ロークを祖父に持ち、異性を虜にしてしまう呪いを継承してしまったため、他者を遠ざけるようにして生きてきた。呪いを解く方法を探してマーリス魔法学院に入学し、聖フィリア教の重大な秘密を知ってしまうことになる。
8歳の時に母のセラフィムであったエイラと上書き契約をして天翔騎士となるも、実戦経験は皆無。
幻獣騎乗術の才能がある。
本名はアリスティア。マーリス魔法学院の図書館塔《ダンテ》に隠棲する金髪碧眼の美少女。巨乳。
十二歳の時に魔術師として最高位の《白》の称号を獲得した天才、光に速度があることを証明した天文魔術の始祖など多数の実績と肩書きにを持ち、それに負けない量の秘密も抱えている。戦闘力は極めて高く、自在に魔術を操る他、カラテを精神統一の一環でたしなんでいる。アルヴェールとシルファのことを、知っているらしいが……。
宗教都市国家ロザディアを統治する評議会議員の孫娘にして、グレイのクラスの優等生。その美しさから密かに《黒曜の美姫(ヌイ・エステル)》と呼び慕われ、周囲からの信頼も厚い。一方で名家の令嬢として振る舞うことに息苦しさをおぼえており、不本意な“奇跡”を強いられているグレイに共感し、仲良くなる。魔法学院で教鞭を執るギール=シモンズは婚約者であり、不満もあるようだが大切に思っている。艶やかな黒髪は東洋の島国出身の母親譲り。
グレイたちが魔法学院の屋上で出会う、紅い瞳の幼い少女。 アリスと同じ金髪で、なぜか彼女のことを「ママ」と呼ぶ。
このサイトを見に来てくれた読者の皆さま、ありがとうございます。川口士です。 本作は、『聖剣学院の魔剣使い』などでおなじみの志瑞祐さんにセラフィムをはじめとする世界観を考えていただき、私が登場人物や物語を考えるという形でつくりあげた物語になります。 地上に魔物があふれ、剣で道を切り開くこの世界で、本作の主人公アルヴェールは、ある理由から名声を求めて旅をしています。旅の連れは両想いだけどいろいろと難ありな女神官と、扱いづらいセラフィムの二人。そして、ある町での姉との再会が、彼を新たな冒険へと誘うのです。 彼らの冒険譚が、皆さまにとっての楽しい一時となれば、作り手としてこれに勝る喜びはありません。
どうも、このような素敵企画の末席を汚させていただきます、早矢塚かつやです。 こちらは川口先生が描かれる神聖フィリア帝国の内部に築かれた宗教都市国家ロザディアの中にあるマーリス魔法学院を舞台とした学園モノになります。 祖父の呪いを解くために大陸の知の殿堂と謳われる図書館塔《ダンテ》にやってきたグレイ。そこに隠れ棲む謎の天才魔術師アリス。二人の出会いが地の底に隠されていた書庫の扉を開き、世界の秘密を暴いていく。そして、少年と少女が対峙するそれぞれの運命とは――! こんな風にいうと、ちょっとワクワクしてきませんかね? 川口先生のと二冊併せて読めば、きっと面白さ倍づけ間違いなしのはずですので、ぜひぜひお手に取ってみてください。