最終選考まで残った応募作は二本。
そして、奇しくも同じ弱点『構成に難あり』を抱えた二本でした。
審査員の相方である山形さんは、年々慈父のごとき優しさをいや増しており、たぶんその辺にはつっこまず、愛情あふれる講評を書かれていると思うので、こちらは小説道場の先生モードで評してみましょうか……。
さて『構成』。いわゆる起承転結・序破急・三幕構成などですね。
ひたすら新しい話を更新し続ける投稿サイトや、キャラの掛け合いを延々書くこと中心のショートストーリーなどとちがい、一本の短編・一冊の長編は『構成』を勘案しつつ執筆しないと、クオリティが減じてしまいます。
ま、どんなメソッドを使おうと、いい作品ができれば、それが正解の構成。
でも、今回の二作品はそこがどちらも不十分で――
たとえば二本とも、冒頭から情報開示の嵐です。頻出する固有名詞、世界情勢、主人公の暗い過去、出まくる脇役、伏線……おお!
君たち、それはまだ早い! 焦りすぎ!
例えるなら
「毎朝、同じ電車で通学する他校の女子に恋しちゃってる俺だけど、今日はじめて改札で話しかけるチャンス!『ずっと前から好きでした!』と言っちゃった!」くらいの先走りです。
そういうのはやっぱり、もっと親しくなってからじゃないと。
無論、導入部での情報提供は大切なタスクです。でも、導入部だけに情報の量と提示方法には気配りが必要で……。
『第442亜人兵団』 / 齊藤瑛研 | |
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光りそうなものはあるけど、光っていない。 |
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『鉄血の修道女』 / 4kaえんぴつ | |
詳細に書く必要のないところを書き込んでしまう。 |
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(敬称略、順不同)
残った作品は二作とやや少ないものの、どちらも作者の才能を感じ取れる作品で、実りある選考であったと思います。
今回の審査に関われたことを光栄に思います。両名の活躍を心より願っております。
『第442亜人兵団』 / 齊藤瑛研 | |
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大変な傑作であると感じました。 |
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『鉄血の修道女』 / 4kaえんぴつ | |
輝くものはあるのですが、技術面での不足が目立ちました。 |
(敬称略、順不同)